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私の推しの宝物

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「とにかく、今回は失敗に終わりましたが、これはたまたま私が計画を聞けたことと、リリーが私の居所を早く見つけることができたからです。次も防げるとは限りません。何か対策を練った方が良いと思います」

 ハルト様の宝物は、本当にたまたま落としたのかもしれない。
 でも、もしかしたら彼らが盗んだのかもしれない。

 私の推しの宝物を、自分たちの欲のために利用するなんて!

 絶対に対策が必要よ。

 ハルト様は攻略対象じゃないけれど、とてもとてもとてもとてもとてもとてもとても素敵な方だから、憧れる令嬢は多いはず。

「あ、ああ。ブロッサム嬢が一緒にいてくれたおかげで、ブロッサム嬢・・・ややこしいな」

「私はリラでいいですよ。リリー、いいよね?」

「・・・リラがいいって言うなら」

「と、とにかくすぐに見つけるものだから、驚いたよ。双子の神秘とかいうやつかい?」

 エルガルド・リファイン様の言葉に、苦笑いしてしまう。

 確かに私とリリーは双子だけど、二卵性だから双子特有の共有感覚はない。

 だって逆の立場なら、私はリリーを見つけることが出来ない。

 私はアレはリリーのシスコンのなせる技だと思っている。

「しかし、証拠がないと彼らを追及するのは難しいな。エミリオ、どうする?」

「常に複数で行動するようにするだけでは、防ぎきれないかもしれないな。ブロッサム嬢たちのこともある。父上に話して影を借りれないか聞いてみる」

「借りれるのか?」

「わからない。この程度のこと、自分たちだけで解決しろと言われる可能性もある。幸いにも僕には妹たちがいる。王太子でなくなっても代わりはいるからな」

 この国は、恋愛結婚を良しとしている。
だから、そんな罠にかかって婚約、結婚することになる場合、周囲からの目は厳しい。

 乙女ゲームでも、エミリオ殿下はリリーと結ばれるためにブロッサム伯爵家に婿入りしようとしていた。

 そして妹たちが女王になるのを嫌がったから、ハルト様に話がいくという展開だった。

 エミリオ殿下だけじゃなく、攻略対象たちに姉や弟など兄弟姉妹がいるのは、家を継ぐための結婚を良しとしていないからだ。

 ただ、ハルト様はご兄弟はいなくて、本来ならリリーも一人っ子のはずだった。

 そうだ。
いないはずの私が転生したことで頭がいっぱいだったけど、リリーは一人っ子だったの?

 恋愛結婚で、ブロッサム伯爵家を継がないことだって考えられるのに。

 乙女ゲームでは、たまたまハルト様がエミリオ殿下の妹に継がせる案を出したけど、お父様たちはどう考えていたんだろう。
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