乙女ゲームが始まってるらしいです〜私はあなたと恋をする〜

みおな

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また誘われた

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「リリー・ブロッサム嬢。リラ・ブロッサム嬢。話したいことがある。今日のランチの時間を空けてもらえるだろうか」

 朝イチから教室にやってきたのは、ギルク・ビブラート公爵令息。

 彼はトレードマークの片眼鏡姿で、綺麗なお辞儀をした。

 公爵家の跡取り息子が、伯爵家の令嬢に頭を下げる。

 そのことに周囲の視線が集まる。

 これはまた何か言われるかも。そう思って、周囲を見たら、公爵令嬢と目が合った。

 だけど、彼女はフッと目を逸らす。
 あれ?これはもしかして本当に攻略対象たち対処してくれたのかな。

「話って何・・・モゴ・・・ムグ・・・」

「わかりました。お昼に、あの特別室で良いんでしょうか?」

 リリーがキツい発言をする前に口を塞ぎ、ギルクに尋ねる。

「あ、ああ。了承してもらえるだろうか?」

「えと、私も一緒でいいんですよね?」

「もちろんだ」

「わかりました。お伺いします」

 私が了承すると、ギルクは安心したように教室から出て行った。

 公爵令嬢のほうを見ると、こちらに視線は向いていないけど意識している気がする。

 まぁ何も言ってこないなら、いいか。

 公爵令息が話しかけにくれば、誰でも気にかかって当たり前だし。

 私も当事者でなければ、聞き耳立ててたと思う。

「ぷふぅ。リラぁ。なんで行くって言っちゃったの?」

「リリー。相手は公爵令息だよ?あんまり失礼なことを口にしちゃ駄目。お父様やお母様にご迷惑をかけることになるかもしれないでしょ?それに、今日はわざわざ朝からこちらの都合を聞きにきて下さったんだよ。誠意ある対応には、ちゃんとお応えしないと」

「むぅ。じゃあ今日は私の隣に座って!」

「ふふっ。いつも家では隣なんだから、皆さまとお話してみれば良いじゃない。入学式でも転びそうなリリーを助けてくださって、ぶつかった方にも注意してくださったし。あ。リリー、あの時のお礼、ちゃんと言ってないでしょ?今日言わないと駄目よ」

 攻略対象たち、そんな悪い人たちじゃないと思うのに、どうしてヒロインのリリーはそんなに毛嫌いするのかな。

 まぁ、人には人の好みというものがあるから、恋愛対象じゃないと言われたらどうしようもないけど。

 リリーは私がそう言うと、頬をぷぅーっと膨らませて、拗ねた顔をする。

 リリーは基本的にシスコンだから、私の言うことに強く文句を言ってこない。

 でも、不満には思うらしく拗ねる。

 私はその膨らんだ頬を人差し指で突いた。

「今日帰ったら、リリーの好きなクッキー作ってあげる。だから、ご機嫌直して」

「本当に?約束よ、リラ」

 リリーは作った物を妙に欲しがる。

 刺繍したハンカチ。手作りお菓子。

 ま、その程度で攻略対象たちと仲良くしてくれるならかまわないけど。
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