16 / 37
来て良かった
しおりを挟む
教皇子息のエルガルドに付いて行った先は、特別室という個室だった。
ここは貴族のみが通う学園だから、王族や高位貴族が申請を出せば使える個室がある。
そりゃ個室なら席はあるでしょうよ。
エルガルドについていく私たちに、ご令嬢たちの視線が絡みつく。
攻略対象たちは全員身分が高い、いわゆる優良物件だ。
高位貴族のご令嬢たちからすれば、自分たちこそ彼らに相応しいと思っていて、伯爵令嬢である私たちがそばにいるのが納得出来ないのだろう。
それに、政略結婚を良しとしないこの国だからこそ、この学園でいるうちに彼らの恋愛対象になりたいはずだ。
はぁ。
乙女ゲームではどうだったっけ。
他のご令嬢からいじめられてる描写はなかったと思うけど、そりゃここはゲームじゃないんだから、ゲーム通りにはいかないわよね。
ご令嬢たちの視線が嫌で、うんざりとした気持ちになる。
これなら、リリーと別々に座った方がマシだったんじゃないかな。
そう思っていた私に言いたい。
少々の嫌な思いを我慢したくなるご褒美がそこにある!
特別室には、攻略対象の面々がいた。
うん。それは最初からわかってる。
君らが私のことをどうでもいいように、私も君らのことはどうでもいい。
私は。何故かその部屋の離れた席で黙々と食事をしている推しを眺めた。
まさかここに、ハルト様がいるなんて!
来て良かった。
最初の一年は男女のクラスは別々だから、入学式以降はほとんど顔を合わせることがなかった。
攻略対象たちはリリーに会うために、よく私たちの前に現れてたけど。
だから、久々に間近で見る推し!
尊い!
「ブロッサム嬢、コチラにどうぞ」
エミリオ王子が、自分の隣の席の椅子を引いている。
この場合のブロッサムって、リリーよね。
ここで、座る場所が問題となる。
特別室のテーブルは、十人が座れるようになっている。
つまりは、五人五人が向かい合わせに座るタイプだ。
そして攻略対象たちは、誰もがリリーの隣に座りたい。
エルガルドは扉を閉めると、黙ってエミリオ王子の向かいの席に座った。
おそらくは、誰がリリーの隣に座るか、前もって話し合っていたのだろう。
エミリオ王子は、部屋奥側の右から二つ目に座っていた。
ハルト様は、部屋手前の左側から二つ目の席だ。
エルガルドの左隣にロキが座り、ギルクはエミリオの横に立っていた。
多分、リリーが隣が私でないと!と喚くことを考えて、座ってないのだと思う。
チラリと王子を見ると、エミリオ王子はハルト様を見ていた。
その視線を受けたハルト様は、スッと立ち上がり、自分の左隣の席の椅子を引いた。
「リラ・ブロッサム嬢。こちらに」
ここは貴族のみが通う学園だから、王族や高位貴族が申請を出せば使える個室がある。
そりゃ個室なら席はあるでしょうよ。
エルガルドについていく私たちに、ご令嬢たちの視線が絡みつく。
攻略対象たちは全員身分が高い、いわゆる優良物件だ。
高位貴族のご令嬢たちからすれば、自分たちこそ彼らに相応しいと思っていて、伯爵令嬢である私たちがそばにいるのが納得出来ないのだろう。
それに、政略結婚を良しとしないこの国だからこそ、この学園でいるうちに彼らの恋愛対象になりたいはずだ。
はぁ。
乙女ゲームではどうだったっけ。
他のご令嬢からいじめられてる描写はなかったと思うけど、そりゃここはゲームじゃないんだから、ゲーム通りにはいかないわよね。
ご令嬢たちの視線が嫌で、うんざりとした気持ちになる。
これなら、リリーと別々に座った方がマシだったんじゃないかな。
そう思っていた私に言いたい。
少々の嫌な思いを我慢したくなるご褒美がそこにある!
特別室には、攻略対象の面々がいた。
うん。それは最初からわかってる。
君らが私のことをどうでもいいように、私も君らのことはどうでもいい。
私は。何故かその部屋の離れた席で黙々と食事をしている推しを眺めた。
まさかここに、ハルト様がいるなんて!
来て良かった。
最初の一年は男女のクラスは別々だから、入学式以降はほとんど顔を合わせることがなかった。
攻略対象たちはリリーに会うために、よく私たちの前に現れてたけど。
だから、久々に間近で見る推し!
尊い!
「ブロッサム嬢、コチラにどうぞ」
エミリオ王子が、自分の隣の席の椅子を引いている。
この場合のブロッサムって、リリーよね。
ここで、座る場所が問題となる。
特別室のテーブルは、十人が座れるようになっている。
つまりは、五人五人が向かい合わせに座るタイプだ。
そして攻略対象たちは、誰もがリリーの隣に座りたい。
エルガルドは扉を閉めると、黙ってエミリオ王子の向かいの席に座った。
おそらくは、誰がリリーの隣に座るか、前もって話し合っていたのだろう。
エミリオ王子は、部屋奥側の右から二つ目に座っていた。
ハルト様は、部屋手前の左側から二つ目の席だ。
エルガルドの左隣にロキが座り、ギルクはエミリオの横に立っていた。
多分、リリーが隣が私でないと!と喚くことを考えて、座ってないのだと思う。
チラリと王子を見ると、エミリオ王子はハルト様を見ていた。
その視線を受けたハルト様は、スッと立ち上がり、自分の左隣の席の椅子を引いた。
「リラ・ブロッサム嬢。こちらに」
15
お気に入りに追加
528
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
転生聖女のなりそこないは、全てを諦めのんびり生きていくことにした。
迎木尚
恋愛
「聖女にはどうせなれないんだし、私はのんびり暮らすわね〜」そう言う私に妹も従者も王子も、残念そうな顔をしている。でも私は前の人生で、自分は聖女になれないってことを知ってしまった。
どんなに努力しても最後には父親に殺されてしまう。だから私は無駄な努力をやめて、好きな人たちとただ平和にのんびり暮らすことを目標に生きることにしたのだ。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる