乙女ゲームが始まってるらしいです〜私はあなたと恋をする〜

ヒロインがめっちゃ塩

「何の用なんですか？皆さんに話しかけられると、他のご令嬢に睨まれて嫌なんですけど」

　どうしよう。
リリーが、リリーが殿下たち攻略対象に滅茶苦茶塩対応すぎるんだけど。

　もう、ほんと岩塩かってくらいしょっぱいんだけど。

　でもってリリー、他のご令嬢に睨まれるとか言っちゃ駄目。

　それ、絶対聞かれてるし。
聞かれてなくても、目の前にいる人たちは権力持ってる人たちなの。

　しかもリリーに興味あるっぽだから、そんなこと言ったら、彼女たちに注意とかすると思うの。

　そしたら余計に絡まれると思う。

「え？そうなのか？名前は分かるかい？僕の方から注意しておこう」

　ほらぁ。

　でも、さすがリリー。王子殿下の言葉にも塩対応だった。

「えと、別に注意とかいらないので、用もないのに話しかけてこないでくれませんか？」

「・・・い、いや、用がないというか、リリー嬢と話がしたくて」

「リラもいるから仕方ないのかもしれませんけど、ブロッサムって呼んでくれませんか？名前呼びとかして、誤解されても嫌なんで」

　どこの世界に、ここまでヒロインに塩対応される攻略対象がいるんだか。

　リリーってば、本当に攻略対象に興味ないの？

　乙女ゲーム『花束みたいな恋をあなたと』の攻略対象は、ちゃんとした攻略対象だよ？

　ちゃんとしてない攻略対象ってどんなんだって話だけど。

　少なくとも、ヒロインに傾倒して学業や公務を疎かにしたり、婚約者はいないけどそういう相手を蔑ろにしたりはしてない、はず。

　まぁ、目の前にいる人たちが、本当にちゃんとしてるかどうかは、今現在ではわからないけど。

「リリー、失礼よ。申し訳ありません」

　私が頭を下げると、王子たちは手を横に振った。

「いや。こちらこそ申し訳なかった。話したいからとご令嬢の迷惑も考えずに。しかし、できれば仲良くしてもらいたい。僕たちは君たちのことがもっと知りたいんだ」

「？」

　今、君たちって言った？
いや、あなたたちが仲良くしたいのはリリーだよね？

　私はモブですらない、本来なら乙女ゲームにはいない存在。

　もしかして、リリーひとりだとめっちゃ塩対応だから、私を緩衝材にしようとしてる？

「リラにちょっかい出さないで下さいっ！リラは私のなんだから！」

「リリー、何言ってるの」

　私はあなたのものじゃないですよ～。
シスコンなのは別にいいけど、誤解を招く発言はやめましょうね～。

　それに、貴族・・・伯爵家の娘として、王族や公爵家という高位貴族との縁を結ぶのは、大切だよ？