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リリーは私の目標

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 私、リラ・ブロッサム、十歳。
ブロッサム伯爵家の、一応次女。というのも、姉のリリー・ブロッサムは私の双子の姉だから。

 ふわふわとしたピンクベージュの髪とキラキラとしたパステルピンクの瞳。

 可愛い系の、優しい女の子で、ちょっとドジっ子だけど、そこが多分攻略対象にはツボなんだと思う。

 そう。
この世界は乙女ゲーム『花束みたいな恋をあなたと』の世界・・・に類似した世界。

 だって、あの乙女ゲームのヒロインであるリリー・ブロッサムには妹なんてもの。

 前世のアラサー喪女の記憶を持ったまま、リラとして生まれた私は、幼い頃は自分の存在意義がわからず、周囲から見たら大人しい、子供らしくない子供だったと思う。

 そんな私に、両親もリリーも、それから使用人も優しく接してくれた。

 特にリリーは、何をするにも私を誘った。

 綺麗な花畑を見つけたから見に行こうと言っては、石に躓き転び。

 鳥の雛を見つけたと言って木に登っては、降りられなくなり。

 綺麗な湖を見に行こうと言っては、溺れかけ。

 その度に私は、泣くリリーを宥め、助けてきた。

 そして悟った。

 私がリリーの妹になったのは、乙女ゲームが始まる前にリリーが大怪我をしたり、もしものことがあったりするのを防ぐためだって。

 前世の私は『花束みたいな恋をあなたと』をプレイしていたから、リリーがドジっ子だというのは知っていた。

 ドシだけど頑張り屋で、失敗しても明るく前向きなリリーは、本当に正統派のヒロインだと思った。

 でもまさか、こんなにドシの具合が酷いとは思わなかった。

 いや。命に関わるドジは駄目でしょ。
助けてくれる攻略対象は、まだそばにいないのに。

 これは、私がしっかりしなくては。
乙女ゲームが始まる前に、リリーが退場してしまうことになるかもしれない。

 私はリリーのことが大好きだ。

 はたから見たら私の方が姉のようで、苦労しているように見えるかもしれないけど、それは違う。

 リリーはこの世界に馴染めなかった私を、常に気にかけてくれていた。

 美味しいものも綺麗なものも、全部全部、先に私に譲ってくれる。

「だって私はリアのお姉ちゃんだから」

 いつもリリーはそう言って笑う。
ドジっ子だけど、リリーの方が本当は私の何倍も大人なのかもしれない。

 だから、私はリリーみたいな女の子になりたい、と思う。

 前世が喪女だとか。

 アラサーだとか。

 乙女ゲームの中にはいなかったキャラだとか。

 思うことも考えることもたくさんあるけれど、リア・ブロッサムとして。
 リリーの妹として。

 リリーみたいに可愛い女の子になりたい。

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