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バグではない?

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 順調に、何事も問題なく、幼少期を過ごした。

 よくあるラノベのように、姉リリーにいじめられることも、両親に姉と比較されて辛い目を見ることも全く、全然、カケラもなかった。

 むしろ、乙女ゲームそのもののドジっ子なリリーと、前世の記憶があるせいで大人びていて何事も無難にこなす私では、私が褒められることの方が多かった。

 ただ、ここが両親の良いところで、ドジっ子ながら頑張り屋のリリーのことも、良いところをちゃんと褒めて、リリーが卑屈にならないようにしていた。

 乙女ゲームが始まるのは学園に入学する十五歳だ。

 そこから二年間学園に通い、十六歳の卒業を以て成人とみなされる。

 学園は貴族は必ず通わなくてはならなくて、その卒業パーティーがいわゆるデビュタントと兼ねられているのだ。

 ちなみに、貴族ならいても当たり前とされる婚約者は、学園を卒業するまではいない。

 ここが、この乙女ゲームの乙女ゲームたる所以だ。

 婚約者がいる相手に想いを寄せるのも、婚約者がいながらヒロインに惹かれるのも、乙女ゲームではない。

 そういう正統派のスタッフが作った乙女ゲームだからこそ、成人にならなければ婚約はしないという貴族らしからぬ決まり事が出来た。

 学園に通ううちに、この人ならと思う相手と恋人になり、家族にも紹介し、お互いの家族が認めたなら卒業してすぐに婚約となる場合もあるらしい。

 基本的に『花束みたいな恋をあなたと』の世界は恋愛結婚らしい。

 ここも貴族らしくない。
貴族特有の、家と家の契約とか政略結婚とかは嫌われる風潮のようだ。

 前世の記憶がある私としては、生きやすいような、恋愛スキルがない私としては生きにくいような。

 とにかく、私がこのいないはずの世界にいることは、今のところバグではないようだ。

 元の乙女ゲームを知らなければ、優しい両親に愛されて、可愛らしい姉がいて、使用人たちも優しくて、何の心配もする必要がなかった、と思う。

 家も伯爵家で、よくあるラノベのように男爵家だったり元平民だったりと、苦労することもなく、かといって公爵家や侯爵家のように、恋愛重視といえど家や領地の運営を無視するわけにはいかない苦労もない。

 それはそうだ。
お金はあるかもしれないけど、それに伴う義務も発生する。

 ゲームじゃないんだから、働かなきゃお金は入って来ないし、ご飯も食べられない。

 つまりは前世と同じわけで、子供のうちは親の脛をかじってれば良いのだけど、成人すれば家族や領民の生活を守る義務が発生するわけだ。

 その点でも、ブロッサム伯爵家はちょうど良かった。

 温暖な領地は災害も少なくて、農産業は順調で、領地も広すぎず狭すぎず、ちょうど良い具合だった。
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