43 / 43
後悔させません〜最終話〜
しおりを挟む
「おかちゃ!」
とてとてとかけて来る幼子を抱き上げようと、手を伸ばしたルーナのすぐ手前で夫であるラインハルトが抱き上げた。
「ルーナ。屈んだりしたら駄目だろう」
「もう!まだお腹も膨らんでませんのよ。大丈夫ですわ」
「いや、駄目だ。ルフト。父様が抱っこしてやろう。ほら、母様の抱っこより高いぞ」
ラインハルトが二歳になった息子のルフトを肩車すると、ルフトはキャッキャッと嬉しそうに手を振り回した。
その手が時々ラインハルトの頭に当たっているが、全く気に留めない。
ルフトの後ろから付いてきていたセレナが、ルーナに膝掛けを渡し、椅子に座るように促している。
結婚して三年。
すぐに妊娠したルーナは、金髪にアイスブルーの瞳のラインハルト似の男の子を産んだ。
そして、先日二人目の妊娠が分かったばかりだ。
元々、年下の可愛い妻に甘かったラインハルトは、妊娠から溺愛が加速し超過保護になった。
それはもう、従姉の王妃が苦笑いするほどに。
ちなみに、ルーナの父ダグラスもラインハルトの両親も孫のルフトに甘く、周囲が甘やかすたびにルーナは苦言を呈す。
「将来、我儘に育ったらどうするんですか。駄目なことは駄目とちゃんと叱って下さいませ」
祖父祖母としては、たまにしか会わない孫は可愛くて仕方ないのだが、将来婚約者に蛙を投げつけるように育ったら・・・そう思うと、ルーナに分かったと謝罪する。
とはいえ、やはり孫を甘やかしてしまい、ルーナにその度に叱られるというのを繰り返していた。
「ルフト。早く大きくなって、お母様と弟や妹を守ってくれよ」
「まもりゅ?」
「優しく強い男の子に育ってくれ」
ラインハルトはルフトが生まれてから、何度も息子にそう語りかけていた。
それは、どう頑張っても十一歳も年上の自分は愛しい妻を残して先に逝くことが理解っているからだ。
そして、それを言っているのを聞くたびにルーナは不満そうに頬を膨らませる。
「もう!わたくしのことはラインハルト様が守って下さいませ」
「それはもちろんだが・・・」
「わたくしと結婚したこと、後悔されていますの?」
「まさかっ!だが、どうしても俺はルーナを残して先に逝くことになるだろう。心配なんだよ」
そう言うラインハルトの手を取ると、ルーナはその手に頬を当てた。
「ラインハルト様。未来のことはその時に考えましょう?もしかしたら病でわたくしが先に逝くことになるかもしれませんでしょう?」
「ルーナを先に逝かせたりしない。もし病になっても、必ず治してみせる」
「ふふっ。ありがとうございます。わたくしも同じ気持ちですわ。ラインハルト様、絶対後悔させませんから今を楽しみましょう?たとえ死が二人を分つ日が来ようとも、わたくしラインハルトと離れませんわ」
ルーナの言葉にラインハルトは目を見張り・・・そしてルフトを肩から下ろすと、抱いてルーナの隣に座る。
「俺が後悔することがあるとすれば、君を悲しませた時だ。だから、俺が生きている限り後悔することはないよ。ずっと一緒だ」
そう言うラインハルトに、ルーナも嬉しそうに微笑んだ。
時が流れ、結婚から五十年後。
ラインハルトは息を引き取り、ルーナもその後を追いかけるように亡くなった。
この日の約束を守るように、二人が離れることはなかった。
*****end*****
とてとてとかけて来る幼子を抱き上げようと、手を伸ばしたルーナのすぐ手前で夫であるラインハルトが抱き上げた。
「ルーナ。屈んだりしたら駄目だろう」
「もう!まだお腹も膨らんでませんのよ。大丈夫ですわ」
「いや、駄目だ。ルフト。父様が抱っこしてやろう。ほら、母様の抱っこより高いぞ」
ラインハルトが二歳になった息子のルフトを肩車すると、ルフトはキャッキャッと嬉しそうに手を振り回した。
その手が時々ラインハルトの頭に当たっているが、全く気に留めない。
ルフトの後ろから付いてきていたセレナが、ルーナに膝掛けを渡し、椅子に座るように促している。
結婚して三年。
すぐに妊娠したルーナは、金髪にアイスブルーの瞳のラインハルト似の男の子を産んだ。
そして、先日二人目の妊娠が分かったばかりだ。
元々、年下の可愛い妻に甘かったラインハルトは、妊娠から溺愛が加速し超過保護になった。
それはもう、従姉の王妃が苦笑いするほどに。
ちなみに、ルーナの父ダグラスもラインハルトの両親も孫のルフトに甘く、周囲が甘やかすたびにルーナは苦言を呈す。
「将来、我儘に育ったらどうするんですか。駄目なことは駄目とちゃんと叱って下さいませ」
祖父祖母としては、たまにしか会わない孫は可愛くて仕方ないのだが、将来婚約者に蛙を投げつけるように育ったら・・・そう思うと、ルーナに分かったと謝罪する。
とはいえ、やはり孫を甘やかしてしまい、ルーナにその度に叱られるというのを繰り返していた。
「ルフト。早く大きくなって、お母様と弟や妹を守ってくれよ」
「まもりゅ?」
「優しく強い男の子に育ってくれ」
ラインハルトはルフトが生まれてから、何度も息子にそう語りかけていた。
それは、どう頑張っても十一歳も年上の自分は愛しい妻を残して先に逝くことが理解っているからだ。
そして、それを言っているのを聞くたびにルーナは不満そうに頬を膨らませる。
「もう!わたくしのことはラインハルト様が守って下さいませ」
「それはもちろんだが・・・」
「わたくしと結婚したこと、後悔されていますの?」
「まさかっ!だが、どうしても俺はルーナを残して先に逝くことになるだろう。心配なんだよ」
そう言うラインハルトの手を取ると、ルーナはその手に頬を当てた。
「ラインハルト様。未来のことはその時に考えましょう?もしかしたら病でわたくしが先に逝くことになるかもしれませんでしょう?」
「ルーナを先に逝かせたりしない。もし病になっても、必ず治してみせる」
「ふふっ。ありがとうございます。わたくしも同じ気持ちですわ。ラインハルト様、絶対後悔させませんから今を楽しみましょう?たとえ死が二人を分つ日が来ようとも、わたくしラインハルトと離れませんわ」
ルーナの言葉にラインハルトは目を見張り・・・そしてルフトを肩から下ろすと、抱いてルーナの隣に座る。
「俺が後悔することがあるとすれば、君を悲しませた時だ。だから、俺が生きている限り後悔することはないよ。ずっと一緒だ」
そう言うラインハルトに、ルーナも嬉しそうに微笑んだ。
時が流れ、結婚から五十年後。
ラインハルトは息を引き取り、ルーナもその後を追いかけるように亡くなった。
この日の約束を守るように、二人が離れることはなかった。
*****end*****
452
お気に入りに追加
4,381
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(149件)
あなたにおすすめの小説
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます
夜桜
恋愛
令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。
アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結お疲れ様です💐
二人は、おしどり夫婦ですね。
年の差があっても関係ないです。二人が思いやる姿は、見本となるし、理想の夫婦像ですね。もう後悔はないですね。
ダミアンも、あんな気持ち悪い思考でなくて、マトモな王子してて、あんな庶民に引っ掛からなければ・・・ああ、駄目だ。最初から躓いてるから無理だ。
後悔させません❗毎日会えないから甘やかす❗どーしてもね😅大切な人との死別は誰にとっても恐怖‼️😱イーヤーだからこそ伝えたい想いは十分に伝えてね(^-^)v楽しいお話しをありがとうございます☺️。
最後までお付き合いくださりありがとうございました😊
完結おめでとう㊗️御座います!!
本当、先の事は誰も分からない、一人で考えてると不安になるよね?でも二人なら未来を楽しみに待つことも出来るよね?
きっとそうやって不安を明るく塗り替えて二人は最後まで手を取り合ったんだろうなぁ╰(*´︶`*)╯♡
きっと不安を口にするのはラインハルトで、思ってても口にしないのはルーナ。
それでもお互いがお互いのことを理解してて、支え合ったと思います。
最後までお付き合いくださりありがとうございました😊