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叔父も愚かな一因だった件②

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「まぁ!」

 白い結婚で離縁したと聞いて、ルーナは叔父の業の深さに眉をしかめた。

 父ダグラスの弟であるダリル叔父は、人当たりがよく絵の才能のある人だったと聞く。

 公爵家の次男が、騎士にも文官にも自分の好きなことだけをして生きている。

 羨ましい限りだ。

 確かに父ダグラスや、両親が甘やかしたというのもあるだろう。

 だが本人だけならともかく、何の関係もない平民の母娘をのは如何なものかとルーナは思う。

 ルーナ自身が、ダリル叔父に会ったのはジェニッタ母娘を連れて帰って来た時だ。

 ルーナの母は悪く言うことはなかったが、父の親戚などはダリル叔父のことを『無責任な偽善者』だと言っているのを、ルーナは聞いたことがある。

 今改めて、父から叔父のことを聞くと、あの親戚たちが話していたことが正しかったのだと思う。

 悪い人間ではなかったのだとは思う。
が、人に手を差し伸べるのは良いが、最後まで責任を持たないのは無責任ではないか。

 ジェニッタたちを可哀想だと思うのは自由だ。

 そして、自分の絵を売ったお金で養うのも、まぁヴァレリア公爵家から籍を抜いていないから良いことではないけど、とりあえず仕方ないとしよう。

 だが病に冒された時点で、ジェニッタたちは切り離すべきだったのだ。

 大体、婚約者がいる時点で、同情でも何でも他の女性に関わるべきではないと思う。

 現に婚約解消の際に父ダグラスは頭を下げ、慰謝料も払ったのだろう。

「それで・・・その方は?」

「離縁して、領地に戻り・・・自害した。親に迷惑をかけたと言って。白い結婚だったのは、彼女がダリルに恋情を残していたことを夫になった侯爵家嫡男に責められたかららしい。それならとお飾りの妻とされ、夫は愛人を家に連れ込んだんだ。そして離縁が成立し離縁した直後、ダリルがジェニッタたちを連れて戻って来た。おそらく噂を聞いたのだろう。すぐに領地に行かれてしまった」

「まだ・・・叔父様をお好きだったのですね」

「ああ。おそらくは・・・」

 なんて罪作りな人だろう。
本人は恋愛感情はなかったらしいが、自分の責任も果たさないくせに、余計なことをするなと言いたい。

 少なくとも、連れ帰って来るべきではなかったのだ。

「侯爵様は・・・」

「娘が自害したことで、奥方も倒れてそのまま儚くなられた。領地や使用人の再雇用先の手配を終えた後、ずっと喪に服していたが・・・今回ジェニッタのことを聞いて採石場に向かったのだろう。ダリルのことも殺したかっただろうが、間に合わなかったのだろう」

 つまりは、原因であるダリルを殺すことは叶わず、せめてジェニッタをと思い、採石場に向かったということか。

 妻と娘を失った侯爵に残されていたのは、復讐だけだったということかもしれない。
 



 
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