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愚か者たちのその後④

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 どうしてこんなことになったのか。

 ジェニッタは、掠れていく視界の中、ぼんやりと考えていた。

 あの日。
旦那様から北の採石場行きを宣言されて、猿轡と縄で縛られたままここへ連れて来られた。

 それもこれも、あのルーナが私のことを「許す」と言わなかったから。

 私の娘であるアネッタを虐めたと言うから、頬を叩いただけなのに。

 旦那様は、私のことをはずなのに。

 きっと、あのルーナが旦那様に嘘を吹きこんだんだわ。

 ルーナの嘘に気付いた旦那様が、きっとすぐに「ルーナの嘘に騙されていた。アイツを家から追い出したよ。許しておくれ、愛しい人」と言って私を迎えに来てくれる。

 そう思っていたのに。

 採石場に連れてこられた初日。
石を運ばなかったからと食事を抜かれた私に、パンとスープをやるからと私を建物の奥の部屋に呼んだ男がいた。

 与えたのがバレると困るからと、こっそり来てくれと言って。

 ああ。
私の美貌に目が眩んだのね?

 アネッタを産んだけれど、私は若い頃と体型も変わっていない。

 私の愛は旦那様だけのものだけど、ダリルのようにというなら許可してあげてもいいわ。

 ジェニッタは驕り高ぶり、自分の都合のいいように記憶を塗り替えていた。

 ダリルは決していたわけではない。

 王族の毒牙にかかり、妊娠した途端に捨てられ、両親からも捨てられたジェニッタを、単にかわいそうだからと助けたに過ぎない。

 ダリルは単にお人好しなだけであり、自分の稼ぎで助けられる範囲で、ジェニッタとアネッタを助けていただけだった。

 そして自分の命が短いことを知り、彼女たちが生きていくのをことを兄に願った。

 とりあえずの生活費は自分の絵の代金で、あとは公爵家が後見となればどこか下位貴族の侍女として働けるだろう。

 そう願ってのことだった。

 それを、ダグラスに一目惚れしたジェニッタは大きな勘違いをした。

 だから、男のも自分が魅力的なためだとをしたのだ。

「な・・・にを・・・」

 石造りの、冷たい部屋に入ったジェニッタは、文句を言おうと男に振り返り・・・

 腹に激しい熱を感じた。

 触れるとぬるりと手が滑り、足がふらついて冷たい石床にへたり込んだ。

 見上げると男が、ジェニッタを憎々しげに睨んでいた。

「お前のせいで・・・」

 ジェニッタは、何故見知らぬ男にそんな憎々しげに睨まれるのかが理解らない。

「死んで詫びろ!」

 そう怒鳴った男が、ジェニッタに馬乗りになり胸にナイフを突き立てた。

 その時初めて、ジェニッタは男に腹を刺されたことに気がつく。

 だが、今更それに気付いたところで、すでにジェニッタの命の灯火は消えようとしていた。

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