29 / 43
顔合わせのお茶会で公爵令嬢がごきげんな件
しおりを挟む
「ごきげんよう、ゼルビア辺境伯閣下」
王太子になることは決定しているが、まだ立太子していないのと公表されていない為に、ルーナはラインハルトのことを辺境伯と呼んだ。
婚約もほぼ内定なのだが、正式な書面での婚約もしていない為に名前で呼ぶことも控えた。
だがルーナの脳内は超ごきげんなことを、お茶の準備をしているセレナは気付いている。
ルーナは高位貴族のご令嬢、しかも王太子の婚約者として王太子妃教育を終えていることから、感情を表情には出さない。
感情を見せることが、時に足元を掬われることになるからだ。
だが父親であるダグラスと、常にそばに控えている侍女のセレナには、ルーナの僅かな感情の動きがよく分かる。
「あ、ああ。お招きありがとう。ヴァレリア公爵令嬢」
ぎこちなく微笑むラインハルト・ゼルビア辺境伯が、ルーナの初恋であることを幼い頃からルーナに仕えているセレナは知っている。
その初恋をしたのが、王太子であったダミアンとの婚約後だったことも。
あの時のルーナの悲しそうな顔を、セレナは忘れられなかった。
だからこそ、大切な主人が初恋の君と婚約者になれることを、セレナはとても喜んでいた。
そう。
それこそやらかしてくれた元婚約者や、勘違い平民に感謝するほどに。
「改めて謝罪させて欲しい。我が従甥が迷惑をかけた」
頭を下げるラインハルトに、ルーナは首を横に振る。
「閣下に謝っていただくことなど、何ひとつありません。むしろ我が叔父の連れて来た平民の母娘がご迷惑をおかけしたこと、申し訳ございません」
「いや、それこそヴァレリア嬢の罪ではない」
二人とも本当に言いたいことは別にあるのだが、どう切り出すべきか迷っていた。
香り高い紅茶で喉を潤したあと、ラインハルトは意を決して口を開いた。
「ヴァレリア嬢。王家より王太子との婚約の打診が来ていると思う」
「はい。閣下が立太子される折に婚約発表となると聞いております」
元々、ダミアンとの結婚式が半年後だったこともあり、式自体の日付は変えないことになっている。
ルーナが王太子妃教育を終えていることもあり、ラインハルトは立太子してから王太子教育をやることになる。
「こんな歳の離れた男との結婚だ。政略結婚と割り切れないところもあるだろう。俺・・・私の方から王妃殿下に話しても良い。正直な気持ちを教えて貰いたい」
従姉が素直に頷くとは思えないが、娘が嫌がるならヴァレリア公爵も無理強いはしないだろう。
公爵の口添えがあれば従姉も納得するのではないか、ラインハルトはそう考えていた。
王太子になることは決定しているが、まだ立太子していないのと公表されていない為に、ルーナはラインハルトのことを辺境伯と呼んだ。
婚約もほぼ内定なのだが、正式な書面での婚約もしていない為に名前で呼ぶことも控えた。
だがルーナの脳内は超ごきげんなことを、お茶の準備をしているセレナは気付いている。
ルーナは高位貴族のご令嬢、しかも王太子の婚約者として王太子妃教育を終えていることから、感情を表情には出さない。
感情を見せることが、時に足元を掬われることになるからだ。
だが父親であるダグラスと、常にそばに控えている侍女のセレナには、ルーナの僅かな感情の動きがよく分かる。
「あ、ああ。お招きありがとう。ヴァレリア公爵令嬢」
ぎこちなく微笑むラインハルト・ゼルビア辺境伯が、ルーナの初恋であることを幼い頃からルーナに仕えているセレナは知っている。
その初恋をしたのが、王太子であったダミアンとの婚約後だったことも。
あの時のルーナの悲しそうな顔を、セレナは忘れられなかった。
だからこそ、大切な主人が初恋の君と婚約者になれることを、セレナはとても喜んでいた。
そう。
それこそやらかしてくれた元婚約者や、勘違い平民に感謝するほどに。
「改めて謝罪させて欲しい。我が従甥が迷惑をかけた」
頭を下げるラインハルトに、ルーナは首を横に振る。
「閣下に謝っていただくことなど、何ひとつありません。むしろ我が叔父の連れて来た平民の母娘がご迷惑をおかけしたこと、申し訳ございません」
「いや、それこそヴァレリア嬢の罪ではない」
二人とも本当に言いたいことは別にあるのだが、どう切り出すべきか迷っていた。
香り高い紅茶で喉を潤したあと、ラインハルトは意を決して口を開いた。
「ヴァレリア嬢。王家より王太子との婚約の打診が来ていると思う」
「はい。閣下が立太子される折に婚約発表となると聞いております」
元々、ダミアンとの結婚式が半年後だったこともあり、式自体の日付は変えないことになっている。
ルーナが王太子妃教育を終えていることもあり、ラインハルトは立太子してから王太子教育をやることになる。
「こんな歳の離れた男との結婚だ。政略結婚と割り切れないところもあるだろう。俺・・・私の方から王妃殿下に話しても良い。正直な気持ちを教えて貰いたい」
従姉が素直に頷くとは思えないが、娘が嫌がるならヴァレリア公爵も無理強いはしないだろう。
公爵の口添えがあれば従姉も納得するのではないか、ラインハルトはそう考えていた。
229
お気に入りに追加
4,393
あなたにおすすめの小説
婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
愛のない結婚を後悔しても遅い
空橋彩
恋愛
「僕は君を望んでいない。環境が整い次第離縁させてもらうつもりだ。余計なことはしないで、大人しく控えて過ごしてほしい。」
病弱な妹の代わりに受けた縁談で嫁いだ先の公爵家は、優秀な文官を輩出している名門だった。
その中でも、近年稀に見る天才、シリル・トラティリアの元へ嫁ぐことになった。
勉強ができるだけで、人の心のわからないシリル・トラティリア冷たく心無い態度ばかりをとる。
そんな彼の心を溶かしていく…
なんて都合のいいことあるわけがない。
そうですか、そうきますか。
やられたらやり返す、それが私シーラ・ブライトン。妹は優しく穏やかだが、私はそうじゃない。そっちがその気ならこちらもやらせていただきます。
トラティリア公爵は妹が優しーく穏やかーに息子を立て直してくれると思っていたようですが、甘いですね。
は?準備が整わない?しりません。
は?私の力が必要?しりません。
お金がない?働きなさい。
子どもおじさんのシリル・トラティリアを改心させたい両親から頼みこまれたとも知らない旦那様を、いい男に育て上げます。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに
hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。
二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる