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顔合わせのお茶会で公爵令嬢がごきげんな件
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「ごきげんよう、ゼルビア辺境伯閣下」
王太子になることは決定しているが、まだ立太子していないのと公表されていない為に、ルーナはラインハルトのことを辺境伯と呼んだ。
婚約もほぼ内定なのだが、正式な書面での婚約もしていない為に名前で呼ぶことも控えた。
だがルーナの脳内は超ごきげんなことを、お茶の準備をしているセレナは気付いている。
ルーナは高位貴族のご令嬢、しかも王太子の婚約者として王太子妃教育を終えていることから、感情を表情には出さない。
感情を見せることが、時に足元を掬われることになるからだ。
だが父親であるダグラスと、常にそばに控えている侍女のセレナには、ルーナの僅かな感情の動きがよく分かる。
「あ、ああ。お招きありがとう。ヴァレリア公爵令嬢」
ぎこちなく微笑むラインハルト・ゼルビア辺境伯が、ルーナの初恋であることを幼い頃からルーナに仕えているセレナは知っている。
その初恋をしたのが、王太子であったダミアンとの婚約後だったことも。
あの時のルーナの悲しそうな顔を、セレナは忘れられなかった。
だからこそ、大切な主人が初恋の君と婚約者になれることを、セレナはとても喜んでいた。
そう。
それこそやらかしてくれた元婚約者や、勘違い平民に感謝するほどに。
「改めて謝罪させて欲しい。我が従甥が迷惑をかけた」
頭を下げるラインハルトに、ルーナは首を横に振る。
「閣下に謝っていただくことなど、何ひとつありません。むしろ我が叔父の連れて来た平民の母娘がご迷惑をおかけしたこと、申し訳ございません」
「いや、それこそヴァレリア嬢の罪ではない」
二人とも本当に言いたいことは別にあるのだが、どう切り出すべきか迷っていた。
香り高い紅茶で喉を潤したあと、ラインハルトは意を決して口を開いた。
「ヴァレリア嬢。王家より王太子との婚約の打診が来ていると思う」
「はい。閣下が立太子される折に婚約発表となると聞いております」
元々、ダミアンとの結婚式が半年後だったこともあり、式自体の日付は変えないことになっている。
ルーナが王太子妃教育を終えていることもあり、ラインハルトは立太子してから王太子教育をやることになる。
「こんな歳の離れた男との結婚だ。政略結婚と割り切れないところもあるだろう。俺・・・私の方から王妃殿下に話しても良い。正直な気持ちを教えて貰いたい」
従姉が素直に頷くとは思えないが、娘が嫌がるならヴァレリア公爵も無理強いはしないだろう。
公爵の口添えがあれば従姉も納得するのではないか、ラインハルトはそう考えていた。
王太子になることは決定しているが、まだ立太子していないのと公表されていない為に、ルーナはラインハルトのことを辺境伯と呼んだ。
婚約もほぼ内定なのだが、正式な書面での婚約もしていない為に名前で呼ぶことも控えた。
だがルーナの脳内は超ごきげんなことを、お茶の準備をしているセレナは気付いている。
ルーナは高位貴族のご令嬢、しかも王太子の婚約者として王太子妃教育を終えていることから、感情を表情には出さない。
感情を見せることが、時に足元を掬われることになるからだ。
だが父親であるダグラスと、常にそばに控えている侍女のセレナには、ルーナの僅かな感情の動きがよく分かる。
「あ、ああ。お招きありがとう。ヴァレリア公爵令嬢」
ぎこちなく微笑むラインハルト・ゼルビア辺境伯が、ルーナの初恋であることを幼い頃からルーナに仕えているセレナは知っている。
その初恋をしたのが、王太子であったダミアンとの婚約後だったことも。
あの時のルーナの悲しそうな顔を、セレナは忘れられなかった。
だからこそ、大切な主人が初恋の君と婚約者になれることを、セレナはとても喜んでいた。
そう。
それこそやらかしてくれた元婚約者や、勘違い平民に感謝するほどに。
「改めて謝罪させて欲しい。我が従甥が迷惑をかけた」
頭を下げるラインハルトに、ルーナは首を横に振る。
「閣下に謝っていただくことなど、何ひとつありません。むしろ我が叔父の連れて来た平民の母娘がご迷惑をおかけしたこと、申し訳ございません」
「いや、それこそヴァレリア嬢の罪ではない」
二人とも本当に言いたいことは別にあるのだが、どう切り出すべきか迷っていた。
香り高い紅茶で喉を潤したあと、ラインハルトは意を決して口を開いた。
「ヴァレリア嬢。王家より王太子との婚約の打診が来ていると思う」
「はい。閣下が立太子される折に婚約発表となると聞いております」
元々、ダミアンとの結婚式が半年後だったこともあり、式自体の日付は変えないことになっている。
ルーナが王太子妃教育を終えていることもあり、ラインハルトは立太子してから王太子教育をやることになる。
「こんな歳の離れた男との結婚だ。政略結婚と割り切れないところもあるだろう。俺・・・私の方から王妃殿下に話しても良い。正直な気持ちを教えて貰いたい」
従姉が素直に頷くとは思えないが、娘が嫌がるならヴァレリア公爵も無理強いはしないだろう。
公爵の口添えがあれば従姉も納得するのではないか、ラインハルトはそう考えていた。
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