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虎の尾を踏まなければ

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 ミノムシ状態の三人から、父親であるダグラスに視線を移したルーナ。

「後のことはお父様にお任せしても?」

「ああ、もちろんだ。だが、ルーナの希望があれば聞いておこう」

「そうですわね・・・死んであっさり終わり、なんてことにならないようお願いします。わたくしの希望はそれだけですわ」

 まるで女神のような美しい笑顔を浮かべながら、口にしたのは辛辣な言葉。

 とことん苦しませて後悔して後悔して、死にたくなるほど苦しませろ、という意味だとダグラスは理解した。

 ルーナが見た目通りの儚く美しいではないことを父親であるダグラスはよく理解している。

 そもそも、そんな優しいと言う名の甘さでは、高位貴族の令嬢はやっていけない。

「では、わたくしはこれで失礼しますわ。皆様、しっかりと後悔して下さいませね?」

「「「!」」」

 三人はモゴモゴと何か喚いているが、猿轡のおかげで耳障りな言葉はルーナたちには届かない。

 護衛騎士、グッジョブである。

 ルーナもそう思ったのだろう。部屋から退室する直前に振り返り、ダグラスにお願いした。

「騎士の方々に、特別手当をあげて下さいませね」

「ああ、分かった」

 父親の返答に今度こそにっこりと微笑って、ルーナは部屋から退室して行った。

 残されたのは、ダグラスとヴァレリア公爵家の騎士、そしてミノムシ三体である。

「さて。愛しい娘の願い通り、罰を与えねばな。ああ。ダミアン殿の処罰も陛下より私に一任されている。貴方はすでに王族ではなく平民なのでね。もちろん、陛下たちの希望は聞いているから、それは汲ませてもらおう」

 ダグラスの言葉に、ダミアンはその顔に喜色を浮かべた。

 罰だなんだと言っているが、両親が唯一の息子に酷い罰を望むわけがない。

「三人とも北の採石場行きだ」

 だがダグラスの言葉は、三人の顔を真っ青にさせた。

 平民の犯罪者が送られる中で、一番過酷と呼ばれる場所。

 それが北の採石場である。

 男も女も老いも若いも関係なく、日が昇ってから沈むまで、延々と石を運ぶ。

 食事はちゃんと出るが、賃金はない。服も支給される作業着。

 寝る場所は男女別の大部屋で、模範囚になれば小さいが個室が与えられる。

 そして、死ぬまで採石場から出ることはない。

 生きながらの地獄と呼ばれる場所である。

「生涯かけてゆっくりと、自分たちのしたことを後悔するといい。連れて行け」

 ダグラスの指示で、騎士たちが三人を引きずって行く。

 抵抗しようにも縄でぐるぐる巻きにされ、助けを乞おうにも猿轡がそれを邪魔する。

 涙や鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、三人はヴァレリア公爵家から運び出された。

「虎の尾を踏まなければ、それなりの幸せもあっただろうに」




 
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