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後悔というのは先に立たず

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「そうか、許してくれる・・・へ?それで?」

 ルーナの返答が許しますだと思い込んでいたダミアンは、頷きかけてそのまま阿呆ヅラのまま固まった。

 もしかしてもしかしなくても、今ルーナは「それで?」と言わなかったか?

 そんな表情で隣のジェニッタとアネッタを見ると、二人ともポカンとしている。

 どうやら聞き違いではなく、ルーナは本当にそう言ったようだ。

 ダミアンは焦ったように繰り返した。

「ルーナ?き、聞こえなかったのか?僕はお前のことが好きで、ちょっと拗らせて冷たくしてしまっただけなんだ。あの婚約破棄も本気じゃなかった。だから、許して欲しい。優しいルーナなら、理解ってくれるよな?」

 確かにそれは嘘ではない。

 ダミアンはルーナのことを最初から好きだったし、ちょーっと変態性のある拗らせで諸々や婚約破棄をしただけで、本気ではなかったのだろう。

 だが、王族が一旦口から出したことを「あれ、冗談だから!なかったことに」なんてできるわけがない。

「ちゃんと聞こえておりますわ。後悔なさっているのは理解しましたわ。で、それで?」

「・・・そ、それでとは・・・?」

「何か勘違いされておられるようですけど、謝罪されたところで、窃盗罪も身分詐称罪も暴行罪もなくなりませんし、ベネツィオ様が王籍を剥奪されそこのアネッタと王命での婚姻をされたことは揺るぎませんわ」

 ジェニッタたちはルーナの言葉に一瞬ポカンとして・・・

 すぐに喚き出した。

「なんて冷たいことを言うの!確かに頬を叩いたりしたけど、貴女がアネッタを虐めるからじゃない!それに貴女がお母様って呼ぶから勘違いしたのよっ!」

「私は盗ったりしてないわ。ちゃんと、ちょうだいってお願いしたじゃない!嫌なら嫌だって言えば良かったのよ!」

「僕たちは婚約者だったというのに、お前は全く僕に従おうとしないんだな!大体、イチ公爵令嬢風情が王太子である僕にその態度はなんだっ!この僕の婚約者であることを何故有り難がらない!」

 ルーナはコテンと首を傾げると、後ろに控えているセレナに視線を向ける。

「ねぇ、セレナ。わたくし、そんなに難しいことを言ったかしら?もしかしてベネツィオ王国の言葉では通じないのかしら?」

「ルーナお嬢様。動物には人間の言葉は通じません。もちろん賢い動物も多くいますが、そこの者たちは違うと思われます。蛙や昆虫と同じではないでしょうか」

「あら、そうなのね。そういえばミノムシみたいね」

 あからさまな誹謗に、カッ!となってルーナたちに飛びかかろうとするものの、ヴァレリア公爵家の護衛騎士たちは優秀である。

 しっかりと三人を押さえつけ、縄でぐるぐる巻きにして、しかも口汚いので猿轡まで噛ませてしまった。

 まさしくミノムシである。
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