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説明することが面倒になった件

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「私は可愛い娘を、駒だなんて思っていないよ」

「あら、お父様。おかえりなさいませ」

 扇を口元から外し満面の笑みで迎える娘に、ダグラスも笑顔で応えた。

「さて、ルーナ。私はそこの平民たちを屋敷に入れるなと家令に伝えていたんだけどね」

「ごめんなさい、お父様。わたくしが入れろと言いましたの。ほら、騒がれてはご近所に迷惑ですし。それにもうお会いすることもありませんでしょう?この際なので言いたいことをお伝えしておこうと思ったのです」

「まぁ、いい。護衛もちゃんと付けているようだしね。それで言いたいことは言えたのかい?」

 ダグラスの問いに、ルーナは頬に手を当てて小首を傾げた。

 言いたいことが言えたかと問われれば、全くもって言えていない。

 ジェニッタたちには、二人が貴族でないことは伝えたが、平民が貴族に手をあげたことに関する罰についてすら話せていない。

 だが、貴族でないことすら理解していないように思える。

 ダミアンに関しても、婚約の白紙撤回にばかり気を取られていて、もう王族でないことも理解してない気がする。

 理解するまで話さなければならないことに、ルーナは嫌気がさしてきた。

 別にもう二度と会うことはないし、話すこともないのだから、貴重な時間を三人のために使うのはもったいないのではないか。

 ルーナは父親に向かって、にっこりと微笑みかけた。

「何だかもう、どうでも良くなりましたわ。お父様にお任せしてもよろしいかしら?」

「やれやれ。まぁ、ルーナの貴重な時間を使う必要もない相手だからな。あとは私が片付けてかまわないね?」

「ええ。お父様にお任せしますわ」

 そう言って、再び扇で口元を隠す。

 ダグラスに任せると言ったものの、どうやら退出はせずに話を聞くらしい。

「さて、と。まずはジェニッタ。お前は平民でありながら、自分を公爵夫人だと周囲に言っていたそうだな?これは身分詐称罪になる」

「まっ、待って下さい、旦那様!私を妻にしてくださったのではないのですか?」

「はっ!平民が公爵家に嫁入りなど出来ん。結婚できないわけではないが、その際は貴族籍を捨てねばならない。そもそも、最初に伝えていただろう?お前たちをヴァレリア公爵家で面倒見るのは、弟の最後の願いだからだと」

 ジェニッタは、自分の容姿に絶大な自信を持っていた。

 だから、そんなことを言っていても自分のことを好きになるはずだと思っていたのだ。

 ダグラスはもちろんだが、そういえばダリルも自分に触れることがなかったことを思い出す。

 ジェニッタは、力が抜けたようにその場に座り込んだ。

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