18 / 43
馬鹿に話が通じない件①
しおりを挟む
「は?はぁ?」
「・・・」
「くそっ」
ルーナの言ったことを、全く理解していないようなアネッタ。
思い当たる節があるのか、黙り込むジェニッタ。
まともに書類に目を通していなかったことに、悪態を吐くダミアン。
そしてそれらを、冷ややかな目で見るルーナ。
四人四様である。
「お母様が公爵夫人でないって、どういうことよっ!」
「どうもこうも、そのままの意味ですわ。お父様はジェニッタさんを妻にしておりませんもの」
大体、ヴァレリア公爵家に来たのが約一年前なのだから、記憶欠如でもない限り理解りそうなものだ。
「この国では、たとえ王族でも平民と結婚することはできますが、その場合は王籍は抜かれ、下位貴族籍を賜るか平民になるか、です。叔父様は、公爵家の次男。爵位はお父様が継ぎ、叔父様は爵位は持っていらっしゃいません。叔父様が他人の面倒を見る余裕があったのは、ご自身の絵の才能ゆえ。そしてお父様が貴女がたを受け入れたのは、叔父様の最後のお願いだったからですわ。お聞きしたところ、キチンとした方だったなら、わたくしの侍女や使用人として雇うつもりだったそうですわ」
「そんなの・・・そんなのおかしいわ!だって、ドレスを買っても、宝石を買っても、お父様は何もおっしゃらなかったもの!」
「ええ。お二人がドレスや宝飾品を買われていたお金は、叔父様の絵の売却によって賄われておりましたから。叔父様の絵に関しては、わたくしもお父様もお二人を相続人と考えておりました。食費などは客人扱いとして我が家が負担しておりましたけど、必要のないドレス代などはご自分で負担していただかないと」
大体、公爵令嬢のルーナでも、不要なドレスや宝飾品を買ったりしない。
必要な時は、公爵令嬢として恥ずかしくないものを準備するが、そうでない時は手頃な値段で品の良い物を着用している。
ドレスもそれぞれ、TPOをわきまえる必要があるのだ。
高ければ良いというものではない。
流行というものはあるが、基本としてベネツィオ王国では、昼間のお茶会には柔らかな色で、露出の少ない物が。夜会などでは、派手さや色味の強いものが好まれる。
目の前の二人のように、背中が大きく開いていたり、目に痛いピンク色でレースやリボンでゴテゴテと飾るものではないのだ。
本当の公爵夫人や令嬢になるのなら、ルーナも教えたのだが、どうやら使用人としても失格だろうと思えたので、放置していたのだ。
「そんなっ!ダミアン様っ、何とか言ってやって下さい!」
「ッ!ルーナ!僕はお前との婚約を破棄するつもりはない!」
「あら?破棄だなんて。陛下より我々の婚約は白紙撤回されましたわ。婚約者でもないのですからヴァレリア公爵令嬢と呼んで下さいませね」
「・・・」
「くそっ」
ルーナの言ったことを、全く理解していないようなアネッタ。
思い当たる節があるのか、黙り込むジェニッタ。
まともに書類に目を通していなかったことに、悪態を吐くダミアン。
そしてそれらを、冷ややかな目で見るルーナ。
四人四様である。
「お母様が公爵夫人でないって、どういうことよっ!」
「どうもこうも、そのままの意味ですわ。お父様はジェニッタさんを妻にしておりませんもの」
大体、ヴァレリア公爵家に来たのが約一年前なのだから、記憶欠如でもない限り理解りそうなものだ。
「この国では、たとえ王族でも平民と結婚することはできますが、その場合は王籍は抜かれ、下位貴族籍を賜るか平民になるか、です。叔父様は、公爵家の次男。爵位はお父様が継ぎ、叔父様は爵位は持っていらっしゃいません。叔父様が他人の面倒を見る余裕があったのは、ご自身の絵の才能ゆえ。そしてお父様が貴女がたを受け入れたのは、叔父様の最後のお願いだったからですわ。お聞きしたところ、キチンとした方だったなら、わたくしの侍女や使用人として雇うつもりだったそうですわ」
「そんなの・・・そんなのおかしいわ!だって、ドレスを買っても、宝石を買っても、お父様は何もおっしゃらなかったもの!」
「ええ。お二人がドレスや宝飾品を買われていたお金は、叔父様の絵の売却によって賄われておりましたから。叔父様の絵に関しては、わたくしもお父様もお二人を相続人と考えておりました。食費などは客人扱いとして我が家が負担しておりましたけど、必要のないドレス代などはご自分で負担していただかないと」
大体、公爵令嬢のルーナでも、不要なドレスや宝飾品を買ったりしない。
必要な時は、公爵令嬢として恥ずかしくないものを準備するが、そうでない時は手頃な値段で品の良い物を着用している。
ドレスもそれぞれ、TPOをわきまえる必要があるのだ。
高ければ良いというものではない。
流行というものはあるが、基本としてベネツィオ王国では、昼間のお茶会には柔らかな色で、露出の少ない物が。夜会などでは、派手さや色味の強いものが好まれる。
目の前の二人のように、背中が大きく開いていたり、目に痛いピンク色でレースやリボンでゴテゴテと飾るものではないのだ。
本当の公爵夫人や令嬢になるのなら、ルーナも教えたのだが、どうやら使用人としても失格だろうと思えたので、放置していたのだ。
「そんなっ!ダミアン様っ、何とか言ってやって下さい!」
「ッ!ルーナ!僕はお前との婚約を破棄するつもりはない!」
「あら?破棄だなんて。陛下より我々の婚約は白紙撤回されましたわ。婚約者でもないのですからヴァレリア公爵令嬢と呼んで下さいませね」
280
お気に入りに追加
4,360
あなたにおすすめの小説
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
その聖女、娼婦につき ~何もかもが遅すぎた~
ノ木瀬 優
恋愛
卒業パーティーにて、ライル王太子は、レイチェルに婚約破棄を突き付ける。それを受けたレイチェルは……。
「――あー、はい。もう、そういうのいいです。もうどうしようもないので」
あっけらかんとそう言い放った。実は、この国の聖女システムには、ある秘密が隠されていたのだ。
思い付きで書いてみました。全2話、本日中に完結予定です。
設定ガバガバなところもありますが、気楽に楽しんで頂けたら幸いです。
R15は保険ですので、安心してお楽しみ下さい。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
傷物にされた私は幸せを掴む
コトミ
恋愛
エミリア・フィナリーは子爵家の二人姉妹の姉で、妹のために我慢していた。両親は真面目でおとなしいエミリアよりも、明るくて可愛い双子の妹である次女のミアを溺愛していた。そんな中でもエミリアは長女のために子爵家の婿取りをしなくてはいけなかったために、同じく子爵家の次男との婚約が決まっていた。その子爵家の次男はルイと言い、エミリアにはとても優しくしていた。顔も良くて、エミリアは少し自慢に思っていた。エミリアが十七になり、結婚も近くなってきた冬の日に事件が起き、大きな傷を負う事になる。
(ここまで読んでいただきありがとうございます。妹ざまあ、展開です。本編も読んでいただけると嬉しいです)
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
【完結】虐げられてきた侯爵令嬢は、聖女になったら神様にだけは愛されています〜神は気まぐれとご存知ない?それは残念でした〜
葉桜鹿乃
恋愛
アナスタシアは18歳の若さで聖女として顕現した。
聖女・アナスタシアとなる前はアナスタシア・リュークス侯爵令嬢。婚約者は第三王子のヴィル・ド・ノルネイア。
王子と結婚するのだからと厳しい教育と度を超えた躾の中で育ってきた。
アナスタシアはヴィルとの婚約を「聖女になったのだから」という理由で破棄されるが、元々ヴィルはアナスタシアの妹であるヴェロニカと浮気しており、両親もそれを歓迎していた事を知る。
聖女となっても、静謐なはずの神殿で嫌がらせを受ける日々。
どこにいても嫌われる、と思いながら、聖女の責務は重い。逃げ出そうとしても王侯貴族にほとんど監禁される形で、祈りの塔に閉じ込められて神に祈りを捧げ続け……そしたら神が顕現してきた?!
虐げられた聖女の、神様の溺愛とえこひいきによる、国をも傾かせるざまぁからの溺愛物語。
※HOT1位ありがとうございます!(12/4)
※恋愛1位ありがとうございます!(12/5)
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも別名義にて連載開始しました。改稿版として内容に加筆修正しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる