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馬鹿に話が通じない件①

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「は?はぁ?」

「・・・」

「くそっ」

 ルーナの言ったことを、全く理解していないようなアネッタ。

 思い当たる節があるのか、黙り込むジェニッタ。

 まともに書類に目を通していなかったことに、悪態を吐くダミアン。

 そしてそれらを、冷ややかな目で見るルーナ。

 四人四様である。

「お母様が公爵夫人でないって、どういうことよっ!」

「どうもこうも、そのままの意味ですわ。お父様はジェニッタさんを妻にしておりませんもの」

 大体、ヴァレリア公爵家に来たのが約一年前なのだから、記憶欠如でもない限り理解りそうなものだ。

「この国では、たとえ王族でも平民と結婚することはできますが、その場合は王籍は抜かれ、下位貴族籍を賜るか平民になるか、です。叔父様は、公爵家の次男。爵位はお父様が継ぎ、叔父様は爵位は持っていらっしゃいません。叔父様が他人の面倒を見る余裕があったのは、ご自身の絵の才能ゆえ。そしてお父様が貴女がたを受け入れたのは、叔父様の最後のお願いだったからですわ。お聞きしたところ、キチンとした方だったなら、わたくしの侍女や使用人として雇うつもりだったそうですわ」

「そんなの・・・そんなのおかしいわ!だって、ドレスを買っても、宝石を買っても、お父様は何もおっしゃらなかったもの!」

「ええ。お二人がドレスや宝飾品を買われていたお金は、叔父様の絵の売却によって賄われておりましたから。叔父様の絵に関しては、わたくしもお父様もお二人を相続人と考えておりました。食費などは客人扱いとして我が家が負担しておりましたけど、ドレス代などはご自分で負担していただかないと」

 大体、公爵令嬢のルーナでも、不要なドレスや宝飾品を買ったりしない。

 必要な時は、公爵令嬢として恥ずかしくないものを準備するが、そうでない時は手頃な値段で品の良い物を着用している。

 ドレスもそれぞれ、TPOをわきまえる必要があるのだ。

 高ければ良いというものではない。

 流行というものはあるが、基本としてベネツィオ王国では、昼間のお茶会には柔らかな色で、露出の少ない物が。夜会などでは、派手さや色味の強いものが好まれる。

 目の前の二人のように、背中が大きく開いていたり、目に痛いピンク色でレースやリボンでゴテゴテと飾るものではないのだ。

 本当の公爵夫人や令嬢になるのなら、ルーナも教えたのだが、どうやら使用人としても失格だろうと思えたので、放置していたのだ。

「そんなっ!ダミアン様っ、何とか言ってやって下さい!」

「ッ!ルーナ!僕はお前との婚約を破棄するつもりはない!」

「あら?破棄だなんて。陛下より我々の婚約は白紙撤回されましたわ。婚約者でもないのですからヴァレリア公爵令嬢と呼んで下さいませね」



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