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招かざる客がやってきた件②

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「前触れも出さずに、失礼だとは思いませんの?」

 扇で口元を隠したルーナが、冷たい視線をダミアンに向ける。

 三人ともすでに平民なのだから、屋敷に入れずに騒がせておけば、そのうち警らの者がやって来ただろう。

 ただ・・・ジェニッタとアネッタはともかく、ダミアンを捕まえることは難しいかもしれない。

 仮にも元王太子で、それが周知されていないからだ。

 その周知のために、父であるダグラスは貴族院に出向いているのだ。

 安全のためにも、ルーナは彼らを無視するべきだったのかもしれない。

 だがもう会う機会もないので、最後に言いたいことがあったのだ。

「ッ!王太子である僕に対して、不敬だぞ!」

「いつまで王太子のおつもりで?書類にサインをされたのでしょう?のそこのお嬢さんと結婚することは、王族のままではできません。殿下・・・いえ貴方が王籍から外されたから出来たのですわ」

「ちょっと待ってよ!そもそも何で私たちが平民なのっ!お姉様ってば酷い!ダミアン様に愛されないからって・・・ひっ!」

 アネッタの言葉が途中で止まる。

 控えている護衛たちが、剣に手をかけ、鋭い視線を彼女に向けたからだ。

 彼らには、危険と判断した時の抜剣許可は与えている。

「勝手に口を開かないでくれますか?別に平民の方だからと、見下すつもりはありませんが、わたくしは貴女のではありません。お父様に最初に言われていたでしょう?」

 幼い頃ならともかく、二人がヴァレリア公爵家にやって来たのは数ヶ月前だ。

 その際に、ダリルの遺志を汲んで公爵家で世話をするが、あくまでも客人扱いはダリルの喪があけるまでのことと伝えられていたはずなのだが。

 それをすっかり忘れて・・・いや、理解すらしていなかったのか?と疑うレベルで、ジェニッタもアネッタも自分が公爵夫人、公爵令嬢であるかのように振る舞っていた。

 叔父であるダリルの絵は相当数残されていたが、としてのドレスや宝飾品を大量に買えば、まさに紙の如く消えていく。

「貴女がたをヴァレリア公爵家でお預かりしていたのは、父の弟の遺志によるもの。見目の良い貴女方が誰の保護下にもなく暮らせば、すぐに良くない方々の手に落ちたでしょう。それを憂いた叔父の願いを叶えるためです。わたくしがお母様と呼びましたのも、叔父様の憂いを晴らす為です。叔父様の余命はわずかで、貴女がたが肩身が狭そうにされていたこともあって、そう呼ばせていただいたのですが、その際にわたくしの侍女がお伝えしていたでしょう?お母様と呼ばれていても家族になったわけではないのだから、勘違いをしないように、と」
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