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招かざる客がやってきた件①

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 ルーナはヴァレリア公爵邸の自室で、のんびりと読書をしていた。

窓を少し開けていたせいか、玄関先の喧噪が聞こえる。

「何かしら?」

 ページを捲る手を止め、扉付近に控える侍女の顔を見る。

 侍女の一人がスッと頭を下げると「確認してまいります」と出て行った。

 残ったルーナ付きの護衛兼侍女は、窓に近付き、そっとそれを閉めた。

「お耳障でしょう」

「あら?かまわないのに」

 そう言いながら、ルーナは再び手元へと視線を落とす。

 ルーナは、聞こえなくなった喧噪を全く気にも止めずに、本に視線を戻した。

 少しすると、先ほど出て行った侍女が戻ってくる。

「お嬢様」

「どうしたの?お客様?」

「それが・・・ダミアン王太子殿下とジェニッタ、アネッタ親子が旦那様に会わせろと。あ。殿下はお嬢様に会いたいそうです」

「あら」

 困ったような侍女の顔に、ルーナは目を細めた。

 お父様はお母様・・・いえ、ジェニッタとアネッタを二度とヴァレリア家の門を通すなとおっしゃったらしいし、相手は平民だから門番としても拒めるけど、殿下が一緒だから対応に困っているのね。

 殿下との婚約は白紙撤回されたし、アネッタと結婚されたはずだけど、わたくしに何のご用かしら?

 全く三人の来訪を気に留めていないルーナの様子に、侍女たちはお嬢様を守らなければと決意を固くする。

「お父様もすぐにお戻りになるでしょうけど、このまま騒がれたら迷惑ね。いいわ、わたくしがお会いします。応接室にお通ししてちょうだい。あ。お茶はいらないわ。あと、応接室に騎士を」

 すでにダミアンも廃籍されたと聞くから、公爵令嬢であるルーナの方が立場が上である。

 それを理解していない三人は、暴挙に出るかもしれない。

 自分の身に危険が及べば、父が悲しむだろう。

 ルーナはちゃんと、そこのところを理解していた。

 騎士を室内に配置し、護衛を兼ねた侍女セレナを伴って、時間をかけてルーナは応接室を訪れた。

 元いた自室に向かおうとしたジェニッタとアネッタは、騎士に威嚇されているし、ダミアンはイライラしたように部屋を彷徨いていた。

 まぁ。まるで動物園ですわね。

 ルーナの思ったことがわかったのだろう。

 ルーナの斜め後ろに従っていたセレナがクスリと笑う。

「やっと来たのかっ!」

 怒りの声を上げるダミアンに、騎士たちが鋭い視線を向ける。

 大切なお嬢様を蔑ろにし、傷つけた愚か者。

 すでに王族ですらないダミアンを、お優しいお嬢様は応接室に入れてくださったというのに、その態度は何なのだ。

 騎士たちの怒りのオーラに、ダミアンは戸惑ったように視線を泳がせた。

 その情けなさに、ルーナはため息を吐きたくなる。

 セレナがサッと扇をルーナに手渡した。



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