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特別編:ルーナの初恋

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*HOTランキング2位、人気ランキング6位記念*

 読んでくださりありがとうございます。
 ランキング入賞記念の特別編です。読まなくても本編には支障ありません。


****************

 わたくしの名前は、ルーナ・ヴァレリア。ヴァレリア公爵家の一人娘ですわ。

 先日、十歳の誕生日を迎えたわたくしは、このベネツィオ王国の王太子殿下であるダミアン様と婚約することになりました。

 王家にはダミアン殿下以外にお子様はいらっしゃらないので、おそらくはダミアン殿下の後ろ盾となることを目的とした婚約だと思います。

 わたくしも公爵家の娘として、恋愛結婚がしたいなどと我儘を言うつもりはありませんわ。

 政略結婚でも、お互いを尊重し合える良い関係を築くことは可能ですもの。

 ダミアン殿下もそう思ってくださっていれば良いのですけど。

 わたくしのそんな淡い願いは、王妃様に言われて二人で庭園を歩いている時に粉々になってしまいましたわ。

 こともあろうに、ダミアン殿下はわたくしに蛙を投げつけて来たのです。

 信じられませんわ。
淑女レディに対しての行いではありません。

 すぐに離れたところに控えていたダミアン殿下の護衛の方が、わたくしの頭の上に乗った蛙を取って下さり、ハンカチで拭いてくださいましたけど・・・

 わたくし、悔しいやら情けないやらで、涙が溢れそうでした。

 と婚約して結婚しなければならないのかと思うと、悲しくなってしまいましたわ。

 それでも、王家から打診された婚約です。

 公爵家のことを思えば、わたくしが我慢すれば良いことです。

 そう思って涙を堪えておりましたら、突然現れた殿方がダミアン殿下の頭を張り飛ばしたのです。

 もちろん十歳の子供相手ですから、それほど強い力ではなかったのだと思いますが、殿下は半泣きになっておられました。

「何するんだよっ!」

「お前こそ何をしている。ご令嬢に対してあんなことをするなんて。お前は恥ずかしくないのか?姉上に言ってもいいんだな?」

「ッ!母上には言わないでよっ!ちょっとびっくりさせたかっただけなんだ。ごめんなさい」

「謝る相手が違うだろう」

 その方に言われて、ダミアン殿下は渋々わたくしに謝罪してくださいました。

 ええ。許してなどいませんわ。
怒られて仕方なく告げられた謝罪に、何の意味がありましょうか。

 そんなことよりも、わたくしの髪をそっと撫でて「ごめんね」と謝って下さった方。

 王妃殿下の従弟で、辺境伯当主のラインハルト・ゼルビア閣下。

 わたくしはこの日、ダミアン殿下の従叔父様であるラインハルト様に一目惚れしてしまいました。

 え?歳の差?
ほんの十一歳ほどですわ。貴族社会では珍しいものではありません。

 問題なのは、婚約者の従叔父だということだけです。

 わたくし、叶うことならラインハルト様のお嫁さんになりたいですが、わたくしが年頃になるまでにはきっとご結婚されてしまいますわね。

 初恋は実らないとよく聞きますけど、本当なのですね。
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