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本人は全く気にしていない件

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「あら?そういえばお父様、お仕事はよろしいの?」

 国王陛下、王妃殿下との謁見の後、馬車でヴァレリア公爵家に戻る途中で、ルーナはふと疑問に思って、向かい側に座る父親に視線を向けた。

 ルーナの父親ヴァレリア公爵家当主ダグラス・ヴァレリアは、公爵家当主としての責務の他に、貴族院の長をしている。

 貴族院は常に稼働しているわけではないが、今回ように王族の婚約には貴族院の承認が必要だ。

 王太子ダミアンの婚約なのだから、父は会議にでなければならないのでは?

 ルーナの視線に、父ダグラスはそっと目の前に座る私の髪を撫でた。

「大切な娘が傷つけられたのだ。ルーナを送り届けてから、王宮に戻るさ」

「まぁ、ありがとうございます。ですが、わたくし傷ついてなどおりませんわ」

 お父様はわたくしが傷ついていると思ってらっしゃるけど、どこに傷つく要素があったのかしら?

 ルーナはそんなことを考えながらコテンと頭を傾げるも、父親がわざわざ送ってくれることに笑顔を見せた。

「そういえば、お母様とアネッタは王宮ですの?」

「・・・ルーナ、ジェニッタを母と呼ぶ必要はない。お前の母は、これまでもこれからもルージュだけだ。ダリルの願いだったから引き受けたが、あれほど勘違いしないように何度も言ったというのに、あの女もあの娘も、頭の中に花でも咲いているのか」

 ダグラスがため息混じりにそう言うと、ルーナは謝罪を口にした。

「わたくしがお母様とお呼びしたから、勘違いさせてしまったのかもしれませんわ」

「いや、客人としての扱いのまま放置していた私がいけないのだ。使用人たちには伝えてあったが、客人扱いでは彼らが注意することも出来なかったのだろう。やはり、私のミスだ。使用人として役に立つようなら、娘もルーナの侍女としようと考えていたのだが、まさかルーナの婚約者にすり寄るような真似をするとは」

「あら?だったではないですか。わたくしは気にしておりませんわ」

 そう言うルーナは、本気で気にしていないようだ。

 これにはダグラスも苦笑した。

「ルーナは殿下のことが気に入らなかったのか?」

「公爵家の娘として、責務だと思い婚約を了承しましたが・・・正直申し上げますと、好意は持っておりませんでしたわ」

「何か理由があるのか?」

「・・・婚約が決まって、顔合わせをした後に殿下と二人で庭を歩きましたでしょう?その時、殿下がわたくしに蛙を投げつけて来たのですわ」

 馬車の中の空気がビシッと固まった。

「泣きたくて、でも泣くのも悔しくて。あれ以来、顔も見たくありませんでしたわ」

 ルーナの発言に、ダグラスのこめかみに青筋が浮かんだ。
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