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義妹が人のものを欲しがる件

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 ルーナ・ヴァレリア公爵令嬢が母親を亡くしたのは、七歳の時だ。

 元々病弱だった公爵夫人は、ルーナが五歳になった頃からベッドの住人となり、ルーナの七歳の誕生日の三日後、風邪をこじらせて帰らぬ人となってしまった。

 ルーナが幼いこともあり、当時の公爵は周囲から何度も再婚を勧められた。

 だが、亡き夫人を想っていた公爵が頷くことはなかった。

 公爵夫人不在のままの公爵家に、一組の母娘が現れたのは、ルーナが十五歳の頃だ。

 その母娘は公爵家で暮らし始める。
最初は遠慮がちだった母娘。

 その二人を気遣うように、ルーナは母親のジェニッタのことを「お母様」と呼び、娘のアネッタのことを妹のように可愛がった。

 多感な年頃ではあったが、ルーナはルーナにできる精一杯で、母娘に優しく接していた。

 それがいけなかったのだろうか。

 アネッタは、次第に我儘を言うようになった。

「お姉様のブローチ素敵。アネッタにちょうだい」

「お姉様のドレスの方が素敵。アネッタにちょうだい」

「お姉様の髪飾り、アネッタの方が似合うわ」

「お姉様のお部屋、アネッタにちょうだい」

 ルーナはアネッタが我儘を言い始めた頃、亡き母親の形見や母親から貰った思い出の品は、それを父親に預けた。

 それを欲しいと言われないように。

 そして、段々と度を越していく我儘をルーナが窘めると、アネッタは泣き喚くのだ。

「お姉様が虐める」と。

 それが鬱陶しかったのと、ちょうど別件があったためルーナはアネッタの望み通り、十五年間慣れ親しんだ自室をアネッタに譲った。

 アネッタはピンク色の髪に同色の瞳、可愛らしい容姿をしていた。

 アネッタは太陽のように明るい色合いの上、可愛い雰囲気の容姿だったので、ルーナに似合うドレスも髪飾りもアネッタには似合わなかったのだが、ルーナはアネッタが望む物はそのまま与えた。

 本当に大切な物は、奪われないように父に預けていたというのもある。

 ルーナには、それらの物に何の執着もなかった。

 部屋だけは思うところがあったが、どちらにしろ別件で留守にしているうちに奪われるのならと、アッサリとアネッタに譲り渡した。

 そして別件を終えたルーナは、婚約者である王太子の誕生日パーティーに参加したのだが・・・

 どうやらアネッタは、王太子であるダミアンの婚約者という座も「欲しい」ようである。

 ダミアンの婚約者の座そんなものいつでもあげるけど、王太子妃欲しいものじゃないかもしれなくてよ?

 ルーナは扇で口元を隠しながら、フッと微笑んだ。
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