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婚約者に婚約破棄を告げられた件

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「お前のような身も心も醜い女がこの高貴な僕の婚約者だなど、虫唾が走る。僕はここにルーナ・ヴァレリア公爵令嬢との婚約を破棄することを宣言する!」

 王宮で開かれたベネツィオ王国王太子の誕生日パーティー。

 その場で本日の主役である王太子が、叫んだ内容に周囲は唖然とした。

 この場で平然としているのは、叫んだ当人のダミアン・ベネツィオ。

 そのダミアンの腕にしがみつくように、ベッタリとくっついているピンク色の髪をした令嬢。

 そして、名を叫ばれたルーナ・ヴァレリア公爵令嬢の三人だけだった。

 そう。
ルーナは平然としていた。

 表情ひとつ変えず、扇で顔半分を隠し、冷ややかなアイスブルーの瞳で目の前の二人を見つめている。

 ハーフアップにした銀髪に、アイスブルーの瞳。
 透けるようは真っ白な肌に、容易く手折れそうな華奢な体躯。

 ヴァレリア公爵家の月の女神と周囲に呼ばれているルーナは、青いドレス姿で背筋を伸ばしたまま婚約者・・・いや婚約破棄を告げられたから元婚約者というべきか、をジッと見つめた。

 金髪にエメラルドグリーンの瞳をしたダミアン・ベネツィオ。

 容姿はそれなりの王太子は、予想以上に馬鹿だったようだ。

「みんなも聞いてくれ!このルーナは、妹であるアネッタのことをずっと虐めていたのだ!」

「ダミアン様ぁ。アネッタがいけないんですぅ」

「ああっ!アネッタはなんて健気なんだ!こんな優しくて愛らしい妹をいじめるなんてっ!そんな毒婦は王太子妃に相応しくないっ!」

 目の前で繰り広げられる、くだらない恋愛ごっこをルーナは冷ややかに見つめる。

 周囲にいるほとんどの貴族も二人を冷ややかに見ているのだが、二人には見えていないようだ。

 まだ国王陛下と王妃殿下は入場されていない。

 まぁ、陛下たちがいたら、こんな茶番を始めた時点で張り飛ばされて拘束されてるだろう。

「だがっ!感謝するが良い!心優しいアネッタは、お前がかわいそうだからと側妃にするよう提案してくれたのだ!そこで床に頭を擦り付けて、どうぞ側妃にしてくださいと頼んでみろ!そうしたら考えてやらないこともな・・・」

「お断りします」

 ダミアンが言い切らないうちに、ルーナはそう言ってカーテシーをした。

「婚約破棄、承りました。すぐに父に伝えて手続きを行います。国王陛下へのご連絡は殿下にお任せいたします。それでは、わたくしはこれで失礼しますね」

「え、あ、え・・・」

 ダミアンが何も言葉を発せないうちに、ルーナは会場から出て行ったのだった。


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