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全てが関係ない

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 伯爵家に帰る前に、新しい屋敷へと向かいました。
 少し、一人で考えるべきだと思ったのです。

 お父様。マリンティア様。ジュリアン王太子殿下。クリスティアン殿下。

 皆様、きっと私のことを考えて、叱責してくださったのです。

 そのことは理解しているつもりなのに、私はやっぱり・・・

『ねぇ、アリスがいやなら、この国を出て精霊の国に行こうよ~』

 ずっと黙っていたアエラスくんが、そう言ってくれます。

「アエラスくん。でもそれは、楽な方へ逃げているだけになります」

『え~、楽でいいじゃん。王様なら、アリスをずっと甘やかして、好きにさせてくれるよ~嫌なこと言う奴も精霊の国にはいないし、そうしようよ~』

 そして、レンブラント王国もサザンスィート王国も、どうなってもいいと言うのかしら。
 ナターシャさんより、ターナー様より、余程私の方が貴族令嬢に相応しくない、いいえ、人として失格者だわ。

 そんな人間が、カイン様の隣にいて相応しいと?

 自分で何もしようとしないで、変わりたいと言いながら変わろうともしないで、お気持ちに応えてもいないのに、まだこの上、図々しくカイン様に縋るつもり?

「アリス嬢」

「カイン様?」

 どうしてここに、カイン様が?

「アリス嬢。たとえ君が貴族令嬢として相応しくなくても、僕には関係ない。たとえ君が僕を好きでなくても、僕はもう君を離してあげることはできないんだ」

「カイン様?」

「僕の妻になれば、君は半分は人でなくなる。寿命が長くなるだけでなく、見た目も年を取らなくなる。だから、このままこの国で暮らすことは出来ない」

 寿命が長くなる?
いえ、それよりも見た目が変わらなくなるとおっしゃられた?

 人間としての寿命と、精霊王様の寿命が違うであろうことは察していました。

 ですが、カイン様の妻になることで、私は人でなくなる?

「我々精霊は、本来は人の世のことなどどうでもいい。それでも人に関わって来たのは、過去に精霊女王が人と結ばれたからだ。その子孫を見守るために人と関わった。だが、それも強制ではない。我々は精霊の国で静かに暮らせればそれでいいのだ。アリス嬢が誰かに責められる世界にいることが苦痛なら、僕たちと共に精霊の国に行こう。僕が君に求めているのは、君が笑顔でいることだけで、別に貴族として不適合でも構いはしない」

「でも私は、カイン様のお気持ちに甘えて、お友達でなんて言って・・・」

「言っただろう?君が僕を好きでなくても離せないと。僕は君が、この人間の世界で言う平民であろうと貴族であろうと、たとえ悪人であろうと関係ない。酷い言い方をすれば、君が僕を嫌いでも関係ないんだ」



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