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さらに続く叱責
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マリンティア様に何もお答えすることができず、私はマリンティア様のお部屋から下がらせていただきました。
アエラスくんは何も言わずに、私の後を付いてきてくださいます。
王族の居住区から出ようとした時、私に声がかかりました。
「ジョージアナ嬢。少しいいだろうか」
クリスティアン殿下、まもなく王太子殿下になられる方でした。
「はい」
「では、少しそこのベンチで話そう」
クリスティアン殿下は、いつも笑みを浮かべておられます。
今も、その顔には笑みがありますが、それは貼り付けられたもののようでした。
「ターナー嬢のことは聞いたか」
「はい。お手数をおかけして申し訳ございません」
「ベルスィート卿が動くと問題になる。たまたま居合わせたこともあり、僕が父上たちにご報告して侯爵家を叱責した。ターナー嬢の発言は、高位の貴族令嬢としては相応しくない。だが、それは君にも言える。君はいずれ陞爵した侯爵家を継ぐ人間だ。それが、あのような発言をうまく諌められないようでは、侯爵としてはやっていけない」
尤もな意見に、俯くことしか出来ませんでした。
今は確かに、お父様がいます。
マリンティア様も。
でも、いつまで私は周囲の方々に自分に起こったことの後始末をしていただくつもりなのでしょうか。
お父様がいなくなれば、マリンティア様がいなくなれば、今度はカイン様におんぶに抱っこで、それでいて番だからとぬくぬくと過ごしていくつもりなのでしょうか。
なら、そのカイン様に見捨てられたら?
私はまだカイン様のお気持ちに何もお返ししていません。
サイードさんとのことがあったからと、勝手に尻込みして。
応えられないなら、さっさとお断りするべきなのです。
そして、応えるつもりなら、さっさと婚約するべきなのです。
「父上も母上も、マリンティアも、君のことを大切に思っている。僕も未来の王太子妃てある婚約者と仲良くしてもらいたいと考えているが、今の君に彼女を紹介することは躊躇われる。君はもっと、自分の意思で立つべきだ。いつまでも周囲の人間は手を貸してはくれない。貸してもらいたければ、それに相応しい人間にならなければならない。何も僕のように腹黒になれとは言わないが、貴族令嬢なのだから、もう少し言うべきことははっきり発言して、毅然とした態度を取るべきだ」
何も答えない私に呆れられたのか、クリスティアン殿下はその場を去っていかれました。
何とお答えするべきだったのでしょうか。
これから頑張ります?
これからなんて・・・
いう資格が私にあるのでしょうか。
それともこんな考えも、甘えなのでしょうか・・・
アエラスくんは何も言わずに、私の後を付いてきてくださいます。
王族の居住区から出ようとした時、私に声がかかりました。
「ジョージアナ嬢。少しいいだろうか」
クリスティアン殿下、まもなく王太子殿下になられる方でした。
「はい」
「では、少しそこのベンチで話そう」
クリスティアン殿下は、いつも笑みを浮かべておられます。
今も、その顔には笑みがありますが、それは貼り付けられたもののようでした。
「ターナー嬢のことは聞いたか」
「はい。お手数をおかけして申し訳ございません」
「ベルスィート卿が動くと問題になる。たまたま居合わせたこともあり、僕が父上たちにご報告して侯爵家を叱責した。ターナー嬢の発言は、高位の貴族令嬢としては相応しくない。だが、それは君にも言える。君はいずれ陞爵した侯爵家を継ぐ人間だ。それが、あのような発言をうまく諌められないようでは、侯爵としてはやっていけない」
尤もな意見に、俯くことしか出来ませんでした。
今は確かに、お父様がいます。
マリンティア様も。
でも、いつまで私は周囲の方々に自分に起こったことの後始末をしていただくつもりなのでしょうか。
お父様がいなくなれば、マリンティア様がいなくなれば、今度はカイン様におんぶに抱っこで、それでいて番だからとぬくぬくと過ごしていくつもりなのでしょうか。
なら、そのカイン様に見捨てられたら?
私はまだカイン様のお気持ちに何もお返ししていません。
サイードさんとのことがあったからと、勝手に尻込みして。
応えられないなら、さっさとお断りするべきなのです。
そして、応えるつもりなら、さっさと婚約するべきなのです。
「父上も母上も、マリンティアも、君のことを大切に思っている。僕も未来の王太子妃てある婚約者と仲良くしてもらいたいと考えているが、今の君に彼女を紹介することは躊躇われる。君はもっと、自分の意思で立つべきだ。いつまでも周囲の人間は手を貸してはくれない。貸してもらいたければ、それに相応しい人間にならなければならない。何も僕のように腹黒になれとは言わないが、貴族令嬢なのだから、もう少し言うべきことははっきり発言して、毅然とした態度を取るべきだ」
何も答えない私に呆れられたのか、クリスティアン殿下はその場を去っていかれました。
何とお答えするべきだったのでしょうか。
これから頑張ります?
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いう資格が私にあるのでしょうか。
それともこんな考えも、甘えなのでしょうか・・・
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