決めたのはあなたでしょう?

みおな

文字の大きさ
上 下
80 / 82

さらに続く叱責

しおりを挟む
 マリンティア様に何もお答えすることができず、私はマリンティア様のお部屋から下がらせていただきました。

 アエラスくんは何も言わずに、私の後を付いてきてくださいます。

 王族の居住区から出ようとした時、私に声がかかりました。

「ジョージアナ嬢。少しいいだろうか」

 クリスティアン殿下、まもなく王太子殿下になられる方でした。

「はい」

「では、少しそこのベンチで話そう」

 クリスティアン殿下は、いつも笑みを浮かべておられます。
 今も、その顔には笑みがありますが、それは貼り付けられたもののようでした。

「ターナー嬢のことは聞いたか」

「はい。お手数をおかけして申し訳ございません」

「ベルスィート卿が動くと問題になる。たまたま居合わせたこともあり、僕が父上たちにご報告して侯爵家を叱責した。ターナー嬢の発言は、高位の貴族令嬢としては相応しくない。だが、それは君にも言える。君はいずれ陞爵した侯爵家を継ぐ人間だ。それが、あのような発言をうまく諌められないようでは、侯爵としてはやっていけない」

 尤もな意見に、俯くことしか出来ませんでした。

 今は確かに、お父様がいます。
マリンティア様も。

 でも、いつまで私は周囲の方々に自分に起こったことの後始末をしていただくつもりなのでしょうか。

 お父様がいなくなれば、マリンティア様がいなくなれば、今度はカイン様におんぶに抱っこで、それでいて番だからとぬくぬくと過ごしていくつもりなのでしょうか。

 なら、そのカイン様に見捨てられたら?
私はまだカイン様のお気持ちに何もお返ししていません。

 サイードさんとのことがあったからと、勝手に尻込みして。
 応えられないなら、さっさとお断りするべきなのです。
 そして、応えるつもりなら、さっさと婚約するべきなのです。

「父上も母上も、マリンティアも、君のことを大切に思っている。僕も未来の王太子妃てある婚約者と仲良くしてもらいたいと考えているが、今の君に彼女を紹介することは躊躇われる。君はもっと、自分の意思で立つべきだ。いつまでも周囲の人間は手を貸してはくれない。貸してもらいたければ、それに相応しい人間にならなければならない。何も僕のように腹黒になれとは言わないが、貴族令嬢なのだから、もう少し言うべきことははっきり発言して、毅然とした態度を取るべきだ」

 何も答えない私に呆れられたのか、クリスティアン殿下はその場を去っていかれました。

 何とお答えするべきだったのでしょうか。
 これから頑張ります?

 これからなんて・・・
いう資格が私にあるのでしょうか。

 それともこんな考えも、甘えなのでしょうか・・・
しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。 私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。 処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。 魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

【完結】私の婚約者は、いつも誰かの想い人

キムラましゅろう
恋愛
私の婚約者はとても素敵な人。 だから彼に想いを寄せる女性は沢山いるけど、私はべつに気にしない。 だって婚約者は私なのだから。 いつも通りのご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不知の誤字脱字病に罹患しております。ごめんあそばせ。(泣) 小説家になろうさんにも時差投稿します。

処理中です...