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少しずつでいい
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「ずっと信じていた人間に裏切られて、傷ついたアリス嬢に、今すぐに自分のことを好きになってくれなどとは言わない。だが、僕がアリス嬢を想っていることだけは信じて欲しい」
カイン様のその言葉は、私の胸の中にじんわりと染み渡っていきました。
確かに私は、サイードさんに裏切られました。
貴族令嬢として、あの時冷静な対応しか取れなかったけれど、本当なら「酷い」と「どうして」となじりたかった。
人を好きになる気持ちは、どうしようもないこと。だけど、ちゃんと私にそれを伝えて婚約を解消してから、ナターシャさんと交際して欲しかったのです。
だけど、お父様やマリンティア様のおかげで、私はサイードさんと距離をとり、サザンスィート王国という違う環境に身を置くことが出来ました。
そこで、カイン様やアエラスくんと出会い、マリンティア様の恋も叶ったことで、ほんの少し婚約解消の辛さから救われていたのです。
私はサイードさんを、嫌いになったわけではありませんでした。
ですが帰国して、私に婚約し直してやると言ったサイードさんに、嫌悪感がわいたのです。
私は、婚約者がこんな身勝手な、優しさも誠実さもない人だとは思いませんでした。
そのことで、余計に誰かを好きになることに臆病になってしまったのです。
ですが、決してカイン様のお気持ちを信じていないわけではありません。
誠実に、私に向き合おうとしてくださるカイン様。
そのお気持ちを疑うようになったら、私はサイードさんと変わりない人間になってしまいます。
ただ、どうしても・・・
「カイン様のお気持ちを疑ってなどいません。ですが、私は・・・」
「怖いのだろう?信じてまた裏切られるのが」
「わかりません。裏切られるとは思っていません。でも、好きになった人がまた他の人に心を移したら、私はもう誰かを好きになることができない気がして」
カイン様はサイードさんのように、不誠実なことはなさらないでしょう。
もし、他の方をそばに置きたいと思われたなら、ちゃんと私に話してくださるはずです。
でも、サイードさんの時よりも好きだと伝えて下さるカイン様を好きになって、もし失うことになったら、私はもう恋愛は出来ない気がするのです。
そうなれば、形式的な政略結婚しか出来ないと思います。
形ばかりの夫婦。
私は、政略結婚はやむなしと言いながらも、お父様のように、誰よりもお母様を愛し続けるような、そんな結婚がしたいのです。
「少しずつでいいんだ。僕はその間、アリス嬢に信じてもらえるよう、好きになってもらえるように伝えていくから」
「・・・はい。ありがとうございます」
私はすでに、カイン様のこんなところに惹かれ始めているのかもしれません。
カイン様のその言葉は、私の胸の中にじんわりと染み渡っていきました。
確かに私は、サイードさんに裏切られました。
貴族令嬢として、あの時冷静な対応しか取れなかったけれど、本当なら「酷い」と「どうして」となじりたかった。
人を好きになる気持ちは、どうしようもないこと。だけど、ちゃんと私にそれを伝えて婚約を解消してから、ナターシャさんと交際して欲しかったのです。
だけど、お父様やマリンティア様のおかげで、私はサイードさんと距離をとり、サザンスィート王国という違う環境に身を置くことが出来ました。
そこで、カイン様やアエラスくんと出会い、マリンティア様の恋も叶ったことで、ほんの少し婚約解消の辛さから救われていたのです。
私はサイードさんを、嫌いになったわけではありませんでした。
ですが帰国して、私に婚約し直してやると言ったサイードさんに、嫌悪感がわいたのです。
私は、婚約者がこんな身勝手な、優しさも誠実さもない人だとは思いませんでした。
そのことで、余計に誰かを好きになることに臆病になってしまったのです。
ですが、決してカイン様のお気持ちを信じていないわけではありません。
誠実に、私に向き合おうとしてくださるカイン様。
そのお気持ちを疑うようになったら、私はサイードさんと変わりない人間になってしまいます。
ただ、どうしても・・・
「カイン様のお気持ちを疑ってなどいません。ですが、私は・・・」
「怖いのだろう?信じてまた裏切られるのが」
「わかりません。裏切られるとは思っていません。でも、好きになった人がまた他の人に心を移したら、私はもう誰かを好きになることができない気がして」
カイン様はサイードさんのように、不誠実なことはなさらないでしょう。
もし、他の方をそばに置きたいと思われたなら、ちゃんと私に話してくださるはずです。
でも、サイードさんの時よりも好きだと伝えて下さるカイン様を好きになって、もし失うことになったら、私はもう恋愛は出来ない気がするのです。
そうなれば、形式的な政略結婚しか出来ないと思います。
形ばかりの夫婦。
私は、政略結婚はやむなしと言いながらも、お父様のように、誰よりもお母様を愛し続けるような、そんな結婚がしたいのです。
「少しずつでいいんだ。僕はその間、アリス嬢に信じてもらえるよう、好きになってもらえるように伝えていくから」
「・・・はい。ありがとうございます」
私はすでに、カイン様のこんなところに惹かれ始めているのかもしれません。
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