決めたのはあなたでしょう?

みおな

文字の大きさ
上 下
70 / 82

番という存在《カイン視点》

しおりを挟む
「そうか・・・」

 アエラスからの報告に、小さく息を吐く。

 アリス嬢とレンブラント王国王女の話を盗み聞きしてきたアエラスは、僕の周囲を飛び回っている。

「アリス嬢には、気付かれなかっただろうな?」

『とーぜん!でも~、アリスは何をあんなに悩んでるの~?』

『もぉ!アエラスは本当に馬鹿ね。番様は、きっと《番であること》だけで自分がもとめられてると思われてるのよ』

『それは、王の失態ですね。決して番様だから求められているのではないのでしょう?』

 アクアやボルトに責められる。
現在、精霊たちは僕とアリス嬢のそばに居たいからと、レンブラント王国王宮内に留まっていた。

 この国には、精霊たちの姿を見ることができる者はいない。

 だから、せいぜい僕が独り言を言っている、変な人間だと思われるだけだ。

 そのこと自体はどうでもいい。
ただ、いずれ婚姻し侯爵となるアリス嬢に迷惑がかかってはいけないから、人前では精霊たちと会話しないだけだ。

 番・・・

 精霊たちの姿を見ることができ、声を聞くことができ、そして触れることができる存在。

 精霊の王である僕の『唯一』であるという証。

 確かに、アエラスから触れることができる存在を見つけたと言われ、歓喜した。

 精霊王にとって、番を得ることは至上の喜びだ。

 渇きが満たされることと、力が桁違いに増すこと。
 それが番を得るということだ。

 だから。
正直に言って、初めて出会った時、愛しいと思ったのは、番だからだと思う。

 番は魂の片割れと言われ、求めずにいられない存在だと聞く。
 
 そんな存在を愛しいと思うのは、当たり前のことだ。

 だけど。
婚約を申し込んだら、自分は伯爵家を継ぐので、と断られた。

 サザンスィート王国の、精霊の加護の恩恵を知っていれば、貴族なら是非にと望むだろうに。

 興味がわいて、友達からということで、交流することになった。

 婚約者に心変わりをされ、婚約を解消したこと。

 レンブラント王国王女の恋を応援したくて、ジュリアンの気持ちを知りたいと、僕に協力を頼んできたこと。

 自分が貴族としては判断が甘く、そのことを恥じて強くなろうとしていること。

 色んなことを知るたびに、アリス嬢をもっと愛しいと思うようになった。

 彼女が常に笑顔でいられるように尽力したい。そう思うようになった。

 もしも・・・
番がアリス嬢でなく、レンブラント王国王女だったとしたら?

 アリス嬢の不安は、きっとそういうことだ。

 確かに、最初は『番だから』だった。
でも、今は・・・


 

しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

初恋の結末

夕鈴
恋愛
幼い頃から婚約していたアリストアとエドウィン。アリストアは最愛の婚約者と深い絆で結ばれ同じ道を歩くと信じていた。アリストアの描く未来が崩れ……。それぞれの初恋の結末を描く物語。

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

処理中です...