決めたのはあなたでしょう?

みおな

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私は恵まれている

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「でも、そんなことをすることは・・・」

「そうね。それはスペンサー子息と同じと言う人がいるかもしれないわね。貴族としては失格だと言う人がいるかもしれない」

 貴族にとって、政略結婚は当たり前のことです。
 平民の方なら恋愛結婚が普通なのでしょうが、我々の結婚は家と家の繋がりだったり、と多くの事情があるのです。

 ですから、こんな良い婚約を、私の気持ち云々で解消するのは間違いなのです。

 それを理解っていないマリンティア様ではないと思います。

「それでもね。私も、それからジョージアナ伯爵も、アリスに幸せになって欲しいの。大好きなお友達のアリスには、好きな人と結ばれて、幸せな一生を送って欲しい。もし、そのためにジュリアン様との婚約が解消されるとしても、私はアリスが幸せになるならかまわないわ」

「マリンティア様・・・」

「王女としては失格だけどね」

 そう言って、笑って下さるマリンティア様。
 ずっと想われていた、サザンスィート王国王太子殿下との婚約を解消することになっても、私のことを優先して下さるというマリンティア様。

 嬉しい。
この方とお友達になれたことが、何よりも嬉しいです。

「マリンティア様と出会えて・・・私、幸せです」

「私もアリスとお友達になれて幸せよ。私と同年代のご令嬢が少なかったことにも感謝だわ。出会えてなければ、アリスの良さに気付けなかったかもしれないもの」

「ふふっ」

 王族のご友人候補は、公爵家や侯爵家から選ばれることが多いですから、伯爵家の私にお声がかかったのは、本当に稀なことです。

 第一王子殿下や第二王子殿下の妃候補にと、二歳年上以上のご令嬢が多く、陛下や王妃様がマリンティア様よりも年下のご友人をご希望されたことも幸いしました。

 私は人の縁に、恵まれているのかもしれません。

 王女殿下であるマリンティア様とお友達になれ、第一王子殿下や第二王子殿下にも気にかけていただき、隣国の王太子殿下にも親しくしていただけているのです。

 そして、精霊王様であるカイン様やアエラスくんたち精霊様にも、優しくしていただいています。

 婚約を解消したとはいえ、スペンサー侯爵様たちにも、お心を砕いていただきましたし、お父様も伯爵家の使用人の方々も私を労って下さいます。

 本当に、私は恵まれているのだと思います。

 ですが、あんなに想って下さっていると思っていた婚約者が、簡単に他の女性に心変わりしたことが忘れられないのです。

 いえ。心変わりではなく、きっと最初から私のことを特別好きだったわけではないのでしょう。

 そして私も、きっとあの方のことを特別好きなわけではなかった・・・

 

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