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好みの拾い物《クリスティアン視点》
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「それで、どんな呪術が使えるんだ?」
あの後、ジョージアナ嬢たちと共に王宮へと戻った。
部屋に必要なものを揃えてから、あの屋敷に移ってもらう予定だ。
マリンティアがジュリアン王太子と共に、インテリアの打ち合わせをしているので、僕は安心してハイラルと呪術使いとの顔合わせをしていた。
呪術使いだと紹介されたのは、僕とさほど年齢の変わらない、ひょろっとした青年だった。
トレントの民の特徴の、黒髪に黒目をしている。
「そうですね。どんなのがお好みですか?」
「その男は、その女に入れ込んだ挙句に婚約者を蔑ろにするような男だ。その女は、見目の麗しい男や高位貴族にまとわりつく、害虫だ」
「なるほど。そうですね・・・」
呪術使いは、思案顔で蓑虫状態の愚か者たちを眺めている。
そういえば、この蔓は切ってもいいのか?精霊様たちの怒りを買ったりしないだろうか。
後で、ケルヴィンに確認させておこう。
「そうですね。それなら、こんなのはいかがですか?」
そう言って、呪術使いが提案したものは、なかなかにえげつなくて、僕の好みだった。
「へぇ。自分の好みの男に見える呪いね。で、ことに及んだら正気に戻るのか」
「ええ。だって好みの男に見えたままなら、つまらないでしょう?」
そういう発想も中々の好みだ。
「それで、男の方は?」
「自分の惚れた女が他の男に抱かれてるのを見るだけで、ショックでしょうけど」
「コイツは阿呆だから、そうなれば他の女に縋ろうとするさ」
「ふーん。なら、どんなに憎んでも嫌っても、この女以外に欲情しないようにしますか?それか・・・女にでなく男にしか欲情しないようにするのも面白いですね」
他の男に抱かれる阿婆擦れにしか欲情しないか、男に欲情するか、か。
元々、あの阿婆擦れは炭鉱で働く男たち用の慰み用に娼館送りするつもりだったが、サイードの扱いを迷っていたんだよな。
阿婆擦れにうんざりして、ジョージアナ嬢に擦り寄られても困るからな。
まぁ、二度と戻って来させるつもりはないが。
「男に欲情か。それ、いいな」
「じゃあ、そうしましょうか。あ。ちなみに期限はどのくらいにしますか?」
「どのくらいなら持続できるんだ?」
「解除しなければ、死ぬまでできますよ。元々、僕のオリジナルの呪術なんです。だから、僕にしか解けないんですよ。あ。でも、ひとつだけ条件があります」
「なんだ?」
「僕をこの国に置いてもらえるなら、術をかけます。実は、鬱陶しい王族をカエルに変えたら犯人探しが始まりましてね。まぁ、証拠なんて残してませんけど、念のために国を出奔して来たんです」
中々に性格も僕好みの男のようだ。
僕は頷いて、彼を僕直属の護衛にすることにした。
実際に護衛はしなくても、僕直属なら誰も何も言えないからな。
中々に面白く、有能な拾い物のようだ。
あの後、ジョージアナ嬢たちと共に王宮へと戻った。
部屋に必要なものを揃えてから、あの屋敷に移ってもらう予定だ。
マリンティアがジュリアン王太子と共に、インテリアの打ち合わせをしているので、僕は安心してハイラルと呪術使いとの顔合わせをしていた。
呪術使いだと紹介されたのは、僕とさほど年齢の変わらない、ひょろっとした青年だった。
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「そうですね。どんなのがお好みですか?」
「その男は、その女に入れ込んだ挙句に婚約者を蔑ろにするような男だ。その女は、見目の麗しい男や高位貴族にまとわりつく、害虫だ」
「なるほど。そうですね・・・」
呪術使いは、思案顔で蓑虫状態の愚か者たちを眺めている。
そういえば、この蔓は切ってもいいのか?精霊様たちの怒りを買ったりしないだろうか。
後で、ケルヴィンに確認させておこう。
「そうですね。それなら、こんなのはいかがですか?」
そう言って、呪術使いが提案したものは、なかなかにえげつなくて、僕の好みだった。
「へぇ。自分の好みの男に見える呪いね。で、ことに及んだら正気に戻るのか」
「ええ。だって好みの男に見えたままなら、つまらないでしょう?」
そういう発想も中々の好みだ。
「それで、男の方は?」
「自分の惚れた女が他の男に抱かれてるのを見るだけで、ショックでしょうけど」
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「ふーん。なら、どんなに憎んでも嫌っても、この女以外に欲情しないようにしますか?それか・・・女にでなく男にしか欲情しないようにするのも面白いですね」
他の男に抱かれる阿婆擦れにしか欲情しないか、男に欲情するか、か。
元々、あの阿婆擦れは炭鉱で働く男たち用の慰み用に娼館送りするつもりだったが、サイードの扱いを迷っていたんだよな。
阿婆擦れにうんざりして、ジョージアナ嬢に擦り寄られても困るからな。
まぁ、二度と戻って来させるつもりはないが。
「男に欲情か。それ、いいな」
「じゃあ、そうしましょうか。あ。ちなみに期限はどのくらいにしますか?」
「どのくらいなら持続できるんだ?」
「解除しなければ、死ぬまでできますよ。元々、僕のオリジナルの呪術なんです。だから、僕にしか解けないんですよ。あ。でも、ひとつだけ条件があります」
「なんだ?」
「僕をこの国に置いてもらえるなら、術をかけます。実は、鬱陶しい王族をカエルに変えたら犯人探しが始まりましてね。まぁ、証拠なんて残してませんけど、念のために国を出奔して来たんです」
中々に性格も僕好みの男のようだ。
僕は頷いて、彼を僕直属の護衛にすることにした。
実際に護衛はしなくても、僕直属なら誰も何も言えないからな。
中々に面白く、有能な拾い物のようだ。
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