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優しさでも甘さでもなく

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「おや?なんだかおもしろいことになってるね」

 近づいてきた馬車が目の前で停まり、中からクリスティアン殿下が現れました。

 おもしろい・・・
ええ、まぁ。お二人とも蔓でぐるぐる巻きにされて、出ているのは顔と足先だけですものね。
 ミノムシのようですわ。

「殿下」

「ごめんね?ジョージアナ嬢。そして、申し訳ない、ベルスィート卿。我が国の膿がご迷惑をおかけしたようだ」

「・・・」

「殿下は・・・どこまでご想像されていたのですか?」

 お言葉は謝罪の形をとられていますけど、最初からこうなることが理解っていたのではないでしょうか。

 精霊様たちに触れることはできなかったから良かったですけれど、もし何かあったらと思うと。
 そう思っていたからか、声に険があったかもしれません。

 クリスティアン殿下は、申し訳なさそうに眉尻を下げました。

「すまない。まさか、この場所までやって来るとは考えていなかった。せっかくの二人の新居を穢す気はなかったんだ」

「二人の新居・・・」

 クリスティアン殿下の言葉を復唱されたカイン様から、不機嫌なオーラが少し消えた気がします。

『うわっ。王様、キモっ』

『アエラス、あれはキモいんじゃなくて、ヤラシイ方よ。番様との新婚生活を想像してんのよ』

『やれやれ。嬉しいのはわかりますが、我々に悟られるようでは、番様にも嫌われますよ』

 アエラスくんたちの会話に、カイン様は皆様を睨むだけで何もおっしゃいません。

 この場にいるのは、私だけではありませんものね。

 精霊様たちを見ることができるジュリアン王太子殿下ならともかく、クリスティアン殿下はそのお姿を見ることは出来ないみたいですもの。

 別に変な目で見たりはしないでしょうが、アエラスくんたちが見えない、声が聞こえない人たちから見たら『変な人』と思われそうですわ。

 私も気をつけましょう。

「それで、このお二人はどうされますの?」

 まだ気を失っていますからいいですけど、目覚めたらうるさいですわ。

 それに先ほどみたいに、カイン様に色目を使われるのも不愉快です。

「ジョージアナ嬢たちは、どうしたい?処刑でもなんでも、二人の望む処罰を与えるよ」

「処刑は・・・」

「ジョージアナ嬢は優しいから、処刑は嫌かな?ベルスィート卿はどうですか?」

「僕は、二度と僕やアリス嬢の目の前に現れないなら、彼女の望む処罰でかまわない」

 カイン様がそうお答えになっているのを聞きながら、私は考えます。

 私がこの方たちに処刑を望まないのは、私が『優しい』から?

 いいえ。
それは優しさではなく、私の『甘さ』です。

 私の貴族としての甘さが、この方たちを増長させたのかもしれません。

 でも、私がこの方たちの処刑を望まないのは『優しい』からでも『甘い』からでもなく・・・





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