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良いアイデアだ《サイード視点》
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父上から屋敷を追い出され、兄上から渡された荷物の中を見ると、僅かばかりの金貨が入っていた。
とりあえず、それで腹を満たし、この先どうするか考える。
しばらく時間をおかないと、父上も頭に血が上っているからな。
「サイード。サイード」
これからどうするか思案していると、僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
「ナターシャ?」
そこには、物陰から僕を手招きするナターシャの姿があった。
ナターシャは疲れた顔はしていたが、相変わらず綺麗なドレスも着ているし、髪もセットしていた。
なんだ。
やっぱり、父上たちの言ったことは嘘だったんだな。
大体、犯罪者になったのなら、こんなところでいるわけがない。
「どうしたんだ?ナターシャ」
「サイードこそ、その荷物なに?どこかに旅行?」
「いや、これは・・・そう。父上と喧嘩をしてね、ほとぼりが冷めるまで何処かに行くことにしたんだ。そうだ!ナターシャの家でしばらく住まわせてくれよ」
僕がそう言うと、ナターシャは顔を青くして、手をブンブンと振った。
「う、うちは駄目よ。狭いし、そ、そう!今、お客が来てて、部屋がないのよ」
「そうなのか?困ったな。宿屋に泊まるにもそう持ち合わせもないからな」
というか、さっきの食事で金貨はほとんどなくなった。
「ねぇ、サイード。私思ったんだけど、アリスさんとの婚約解消、取り消したらどうかな?」
「は?」
「だって、アリスさん、サイードのことが好きだから、どうにか気を引きたくて慰謝料とか言ってるんじゃない?それに、婚約者に戻ったら、伯爵家で住めるじゃない」
「そ、それはそうかもしれないけど・・・僕はナターシャを愛してるんだ。ナターシャだって僕を愛してるって言っただろう?」
僕がそう言うと、ナターシャはその綺麗な顔に憂いを浮かべて、瞳を涙でウルウルとさせた。
「私、サイードと一緒にいられるなら、愛人でもいいの。だって、サイードには男爵家当主なんて似合わないわ。やっぱり伯爵家以上じゃないと」
ああ!
ナターシャはなんて心の優しい女性なんだ!僕のために日陰の身で良いと言ってくれる。
しかし、それは良い案だな。
婚約解消を取り消せば、慰謝料もなくなるし、父上だって冷静になるだろう。
僕はナターシャと連れ添って、ジョージアナ伯爵家に向かうことにした。
伯爵家に着くと、門の前で使用人と思わしき男が、深々と頭を下げてきた。
「スペンサー侯爵子息様とゾナトフ男爵令嬢様ですね。どうぞ、お入りください」
「え?ああ。あ、アリスは・・・」
「お嬢様と旦那様はおでかけですが、どうぞ」
前の時の家令とは、対応が天地の差だな。
きっと、あの後伯爵に叱られてクビになったのだろう。
僕とナターシャは男に勧められるままに、屋敷内へと足を踏み入れた。
とりあえず、それで腹を満たし、この先どうするか考える。
しばらく時間をおかないと、父上も頭に血が上っているからな。
「サイード。サイード」
これからどうするか思案していると、僕の名を呼ぶ声が聞こえた。
「ナターシャ?」
そこには、物陰から僕を手招きするナターシャの姿があった。
ナターシャは疲れた顔はしていたが、相変わらず綺麗なドレスも着ているし、髪もセットしていた。
なんだ。
やっぱり、父上たちの言ったことは嘘だったんだな。
大体、犯罪者になったのなら、こんなところでいるわけがない。
「どうしたんだ?ナターシャ」
「サイードこそ、その荷物なに?どこかに旅行?」
「いや、これは・・・そう。父上と喧嘩をしてね、ほとぼりが冷めるまで何処かに行くことにしたんだ。そうだ!ナターシャの家でしばらく住まわせてくれよ」
僕がそう言うと、ナターシャは顔を青くして、手をブンブンと振った。
「う、うちは駄目よ。狭いし、そ、そう!今、お客が来てて、部屋がないのよ」
「そうなのか?困ったな。宿屋に泊まるにもそう持ち合わせもないからな」
というか、さっきの食事で金貨はほとんどなくなった。
「ねぇ、サイード。私思ったんだけど、アリスさんとの婚約解消、取り消したらどうかな?」
「は?」
「だって、アリスさん、サイードのことが好きだから、どうにか気を引きたくて慰謝料とか言ってるんじゃない?それに、婚約者に戻ったら、伯爵家で住めるじゃない」
「そ、それはそうかもしれないけど・・・僕はナターシャを愛してるんだ。ナターシャだって僕を愛してるって言っただろう?」
僕がそう言うと、ナターシャはその綺麗な顔に憂いを浮かべて、瞳を涙でウルウルとさせた。
「私、サイードと一緒にいられるなら、愛人でもいいの。だって、サイードには男爵家当主なんて似合わないわ。やっぱり伯爵家以上じゃないと」
ああ!
ナターシャはなんて心の優しい女性なんだ!僕のために日陰の身で良いと言ってくれる。
しかし、それは良い案だな。
婚約解消を取り消せば、慰謝料もなくなるし、父上だって冷静になるだろう。
僕はナターシャと連れ添って、ジョージアナ伯爵家に向かうことにした。
伯爵家に着くと、門の前で使用人と思わしき男が、深々と頭を下げてきた。
「スペンサー侯爵子息様とゾナトフ男爵令嬢様ですね。どうぞ、お入りください」
「え?ああ。あ、アリスは・・・」
「お嬢様と旦那様はおでかけですが、どうぞ」
前の時の家令とは、対応が天地の差だな。
きっと、あの後伯爵に叱られてクビになったのだろう。
僕とナターシャは男に勧められるままに、屋敷内へと足を踏み入れた。
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