決めたのはあなたでしょう?

みおな

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 カイン様と婚約したことで、レンブラント王国も精霊様たちの加護を授かるようです。
 そのことで、我がジョージアナ伯爵家は侯爵家に陞爵されるということでしょうか。

 伯爵でも荷が重いのに、侯爵だなんて。出来ればお断りしたいです。

 ケルヴィン殿下には先に戻っていただき、カイン様とアエラスくんと共に屋敷内を確認します。

「そういえば、アエラスくんたちは普段はどこで眠っていらっしゃいますの?」

『え~?僕は普段は精霊国でいるけど、そのへんで眠ってるというか。アクアは湖の中にいるし、イグニスは火山にいるかな~』

 ええと。それは眠っているといいますの?
 カイン様はベッドで休まれていますのよね?精霊様たちにはベッドは必要ないということなのかしら?

「精霊は自然の中で生まれる。水の精霊は水の中で。風の精霊は大気の中で。人の住む部屋の中で暮らすよりも自然の中にいる方が、彼らにとっては自然なんだ」

『僕は、アリスのそばにいるのも楽しいよ~?アリス、優しいし~、いい匂いする~』

「近い!」

 私にスリスリと頬擦りするアエラスくんを、カイン様がつまみ上げてポイっと放り投げます。

 アエラスくんは上手に空中で一回転すると「王様、横暴~」なんて言ってますわ。

 怪我はないみたいですけど、放り投げたりしては駄目ですわ。

「カイン様。放り投げたりしてはいけませんわ。どこかにぶつかったりしたら怪我をしてしまいます」

「ん?大丈夫だ。精霊たちは壁も家具も扉も、全てすり抜けてしまうから。精霊に触れられるのは、僕とアリス嬢だけだよ」

 そういえば、壁は通り抜けてましたわ。
ということは、私やカイン様の上になら座れるけれど、ベッドやソファーの上には座れないということですか?

「私の上になら座れるのですよね?なら、私はかまいませんわ」

「いや、しかし・・・」

「火山や湖は作れませんけど、この屋敷がアエラスくんたちにとっても、心地いい場所にしたいのです」

「優しいな、アリス嬢は」

 カイン様は目を細めて、そんな風に褒めてくださいます。

 その眼差しに、顔が赤くなるのがわかります。

 それと同時に、胸の奥に軽い痛みを感じました。

 かつての婚約者も、最初はこんなふうに私のことを褒めてくれたり、優しく接してくれていました。

 別に彼は私のことを罵って、別れたわけではありません。

 ただ、他に好きな人ができて、私を蔑ろにしただけ。

 カイン様のことを、信じていないわけではないつもりです。

 でも・・・

「アリス!こんなところで何をしている!僕というがいながら、他の男と逢い引きかっ!」

 突然、現れた人の、そのあり得ない言葉と存在に、私は固まってしまいました。





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