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黒い企み

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「え?それでどうして、家に入れたのですか?」

 だって、スペンサー侯爵家から勘当されたということは、サイード様・・・様いらないけど、元婚約者は平民になったということでしょう?

 だって、ナターシャ様もゾナトフ男爵家から勘当されたと聞きましたわ。

 なら、憲兵を呼べば良かったのでは?

 そう思った私に、お父様と国王陛下はものすごく申し訳なさそうな、なんとも言えない表情をされました。

「ジョージアナ嬢。すまん。全てはクリスティアンの考えなのだ」

「まぁ!クリスティアンお兄様。悪巧みですの?」

 マリンティア様がそう言うと、クリスティアン殿下はニヤリと笑いました。
 まぁ。本当に、悪いことを考えられているようなお顔ですこと。

「いや、だって、家と家の契約である婚約を勝手に解消しといて、しかも原因が不貞だよ?もちろん、人の気持ちは移りゆくものだから、好きな人ができたというのは仕方ないことだけどね。それなら、ちゃんと婚約解消の話をしてから恋人を作るべきだよね」

 クリスティアン殿下のおっしゃっていることは、正しいですわ。

 解消は悲しいことですけど、ちゃんと侯爵様と我が家のお父様に申し出て下さり、それからナターシャ様とお付き合いなさったのなら、勘当なんてされなかったでしょうに。

 でも、だからといって、何故我が家に住みつかせなければなりませんの?

「今のサイードは平民だよ?本人は貴族のつもりかもしれないけど。まぁ、貴族としても家主の許可なく家に押しかけるなんて有り得ないけどね。不法侵入に、もし勝手に家のものを消費したり売ったり買ったりしたら、窃盗罪も付くね。ふふっ。楽しみだねぇ、どれだけ罪を重ねるのか」

「そのために家に入れさせたのですか?」

「ジョージアナ嬢もジョージアナ伯爵も、あんな男の手垢のついた家など嫌だろう?幸いにも、伯爵はあの家に執着はないと言ってたし。新たに別の場所に屋敷を構えるといいよ」

「殿下にこう言われてね。アリスがカイン卿と婚約するのなら、それもいいかと思ったのだよ。アリスが婚姻したら、私はレジーナとの思い出の詰まった領地の屋敷に腰を落ち着けるつもりだしね」

 お母様は、私が幼い頃に亡くなられたので、今の屋敷での思い出はありません。

 確かに領地から出てきて暮らし始めた屋敷ですけど、特別な執着もありませんけど、サイード様の罪を作るために家をあけ渡すなんて。

「あの男の罪はね、自分のしたことの意味を理解していないことだと思わないかい?貴族としての婚約の意味。婚約者に誠実であるという意味。貴族として生きることの意味。そして何より、人としてどうあるべきかという意味だよ」






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