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帰国に向けて

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「ティア。いつ来れる?何なら、僕も一緒に行こうか?」

「ジュリアンお兄様。半年ほどですわ」

「ティア。お兄様じゃなくジュリアンだろ?ほら、呼んで」

 マリンティア様が、想いを伝えられてから一ヶ月。そろそろ、帰国しなければならない日が近づいて来たのですが・・・

 目の前のマリンティア様に対して、婚約者になられた王太子殿下であるジュリアン様の態度が甘すぎますわ。

 この方、あんなに婚約することを躊躇われておりましたのに。

 同一人物なのかしら?と思うほど、マリンティア様を溺愛されていますわ。

 甘すぎです。
当分、紅茶に砂糖は要りませんわ。
 少し、塩っぱいお菓子はありますかしら。

「・・・アイツは極端だな」

『だね~。でも、王様も似たようなものだよ』

 私の隣で、カイン様とアエラスくんがやれやれといった顔で会話しています。

 ええ。カイン様も似たようなものだと思いますわ。
 私に、早々に婚約を申し込まれ、お名前で呼んでとおっしゃいましたわよね。

「しかし、婚約者か・・・」

『羨ましい?王様』

「ああ・・・あ、いや、アリス嬢の側にいられるだけで幸せだ」

 それは多分、半分は嘘だと思います。
でも焦ってないよ、私の望む時でいいよ、とカイン様はおっしゃっているのだと思います。

 婚約するのが嫌なのではありません。
私が伯爵家を継ぐことも理解してくださっていますし。
 精霊王様というお立場なのに、申し訳ないとは思いますが。

 ただ、婚約解消されたばかりですし、婚約にはお父様の了承も必要です。

 我が国に来ていただけるなら、国に利もありますし、認めていただけるとは思いますが。

「お父様にお会いしていただくまで、婚約はお待ちください。カイン様ならお父様も認めて下さるとは思いますが、家主の許可なく、婚約するわけにはいかないのです」

「いや。婚約に前向きでいてくれるなら、それでかまわない」

「ありがとうございます。それで、帰国の際に、カイン様もご一緒なさいますか?」

「僕は転移魔法も使えるが、是非アリス嬢と一緒に向かいたい。どうせ、ジュリアンも婚約者と一緒に行くだろうし、馬車は出せるだろう」

 ああ。
王太子殿下は婚約のご挨拶に、レンブラント王国へご一緒なさるのかもしれませんね。

 でも、本当に良かったです。
マリンティア様の恋心が叶って。それに王太子殿下も前を向かれたようですし。

 帰国は三日後。
ジュリアン王太子殿下と、精霊王様であるカイン様もご一緒に、レンブラント王国に向かうことに決まりました。

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