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敵に回すべきでない人《ジョージアナ伯爵視点》

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「ああ。あの色魔・・・いや、気狂い・・・ご令嬢ね。大丈夫、見つけてあるよ」

 クリスティアン殿下・・・
それは本心でしょうが、あからさま過ぎるでしょう。

 そういえば、殿下は学園に通っている頃に、あの令嬢にまとわりつかれたせいで、婚約者のご令嬢のご機嫌を損ねられたんだったな。

 しかし、さすが有能と名高いクリスティアン殿下だ。
 すでに、あの男爵令嬢を見つけているとは。

 最初から、監視をつけていたということだろう。

「監視されていたのですかな?」

「ああ。ああいう常識のない人間は、何をやらかすかわからないからね。現に、マリンティアの大切なご友人であるジョージアナ嬢の婚約者に手を出した」

「お止めくださることも出来たのではないですか?」

 そうすれば、アリスは傷つかずに済んだのではないか。

「あの令嬢から近付いたのなら、止めたけどね。でも、出会いは偶然だとしてもそれから接触を持ったのは、スペンサー子息の方だ。そんな男は、伯爵のご令嬢に相応しくないだろう?」

 腹黒い笑みを浮かべたクリスティアン殿下に、ため息がもれる。

 だから放置したのか。
サイード・スペンサーがあの男爵令嬢にのめり込み、アリスと婚約解消するのを。

 王族としては、その腹黒さは正しいものだろう。
 情ではなく、理で判断しなければならない義務が彼らにはある。

 しかし、可愛い娘が傷つくのを放置されたことに納得はいかない。

「殿下」

「分かってるよ。ジョージアナ嬢を傷付けた報いは、ジョージアナ嬢が納得する形で詫びさせてもらう。僕にとっても、ジョージアナ嬢は妹みたいなものだからね」

 アリスが詫びを必要とするとは思わないが、それでも何か殿下の力を必要とする時があれば、お力を貸してもらえるだろう。

「それで、見つけた令嬢は?」

「逃げられはしないから心配いらないよ。僕はね、待ってるんだ。舞台が整うのを」

「待つ、ですか?」

「そう。待ってるんだ。あの愚か者たちが、堕ちるところまで堕ちるのをね。ゾナトフ男爵も、スペンサー侯爵も、ちゃんとした『貴族』だ。子育てには失敗したとしか言えないけどね。だが、彼らは貴族として相応しくない愚か者たちを、切り捨てる判断をした。ふふっ。楽しみだねぇ。頼る家を失い、真実の愛とやらの相手の愛情も失ったら、あの愚か者たちは何に縋ろうとするんだろうね」

 黒い笑みを浮かべたクリスティアン殿下に、陛下も苦笑いをしている。

 本当に、この方は腹黒い。
おそらく、ご婚約者のご機嫌を損ねた恨みもあるのだろう。

 まぁ、私も可愛い娘を傷つけられた恨みがある。彼らには、堕ちるところまで堕ちてもらおう。

 


 
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