46 / 82
敵に回すべきでない人《ジョージアナ伯爵視点》
しおりを挟む
「ああ。あの色魔・・・いや、気狂い・・・ご令嬢ね。大丈夫、見つけてあるよ」
クリスティアン殿下・・・
それは本心でしょうが、あからさま過ぎるでしょう。
そういえば、殿下は学園に通っている頃に、あの令嬢にまとわりつかれたせいで、婚約者のご令嬢のご機嫌を損ねられたんだったな。
しかし、さすが有能と名高いクリスティアン殿下だ。
すでに、あの男爵令嬢を見つけているとは。
最初から、監視をつけていたということだろう。
「監視されていたのですかな?」
「ああ。ああいう常識のない人間は、何をやらかすかわからないからね。現に、マリンティアの大切なご友人であるジョージアナ嬢の婚約者に手を出した」
「お止めくださることも出来たのではないですか?」
そうすれば、アリスは傷つかずに済んだのではないか。
「あの令嬢から近付いたのなら、止めたけどね。でも、出会いは偶然だとしてもそれから接触を持ったのは、スペンサー子息の方だ。そんな男は、伯爵のご令嬢に相応しくないだろう?」
腹黒い笑みを浮かべたクリスティアン殿下に、ため息がもれる。
だから放置したのか。
サイード・スペンサーがあの男爵令嬢にのめり込み、アリスと婚約解消するのを。
王族としては、その腹黒さは正しいものだろう。
情ではなく、理で判断しなければならない義務が彼らにはある。
しかし、可愛い娘が傷つくのを放置されたことに納得はいかない。
「殿下」
「分かってるよ。ジョージアナ嬢を傷付けた報いは、ジョージアナ嬢が納得する形で詫びさせてもらう。僕にとっても、ジョージアナ嬢は妹みたいなものだからね」
アリスが詫びを必要とするとは思わないが、それでも何か殿下の力を必要とする時があれば、お力を貸してもらえるだろう。
「それで、見つけた令嬢は?」
「逃げられはしないから心配いらないよ。僕はね、待ってるんだ。舞台が整うのを」
「待つ、ですか?」
「そう。待ってるんだ。あの愚か者たちが、堕ちるところまで堕ちるのをね。ゾナトフ男爵も、スペンサー侯爵も、ちゃんとした『貴族』だ。子育てには失敗したとしか言えないけどね。だが、彼らは貴族として相応しくない愚か者たちを、切り捨てる判断をした。ふふっ。楽しみだねぇ。頼る家を失い、真実の愛とやらの相手の愛情も失ったら、あの愚か者たちは何に縋ろうとするんだろうね」
黒い笑みを浮かべたクリスティアン殿下に、陛下も苦笑いをしている。
本当に、この方は腹黒い。
おそらく、ご婚約者のご機嫌を損ねた恨みもあるのだろう。
まぁ、私も可愛い娘を傷つけられた恨みがある。彼らには、堕ちるところまで堕ちてもらおう。
クリスティアン殿下・・・
それは本心でしょうが、あからさま過ぎるでしょう。
そういえば、殿下は学園に通っている頃に、あの令嬢にまとわりつかれたせいで、婚約者のご令嬢のご機嫌を損ねられたんだったな。
しかし、さすが有能と名高いクリスティアン殿下だ。
すでに、あの男爵令嬢を見つけているとは。
最初から、監視をつけていたということだろう。
「監視されていたのですかな?」
「ああ。ああいう常識のない人間は、何をやらかすかわからないからね。現に、マリンティアの大切なご友人であるジョージアナ嬢の婚約者に手を出した」
「お止めくださることも出来たのではないですか?」
そうすれば、アリスは傷つかずに済んだのではないか。
「あの令嬢から近付いたのなら、止めたけどね。でも、出会いは偶然だとしてもそれから接触を持ったのは、スペンサー子息の方だ。そんな男は、伯爵のご令嬢に相応しくないだろう?」
腹黒い笑みを浮かべたクリスティアン殿下に、ため息がもれる。
だから放置したのか。
サイード・スペンサーがあの男爵令嬢にのめり込み、アリスと婚約解消するのを。
王族としては、その腹黒さは正しいものだろう。
情ではなく、理で判断しなければならない義務が彼らにはある。
しかし、可愛い娘が傷つくのを放置されたことに納得はいかない。
「殿下」
「分かってるよ。ジョージアナ嬢を傷付けた報いは、ジョージアナ嬢が納得する形で詫びさせてもらう。僕にとっても、ジョージアナ嬢は妹みたいなものだからね」
アリスが詫びを必要とするとは思わないが、それでも何か殿下の力を必要とする時があれば、お力を貸してもらえるだろう。
「それで、見つけた令嬢は?」
「逃げられはしないから心配いらないよ。僕はね、待ってるんだ。舞台が整うのを」
「待つ、ですか?」
「そう。待ってるんだ。あの愚か者たちが、堕ちるところまで堕ちるのをね。ゾナトフ男爵も、スペンサー侯爵も、ちゃんとした『貴族』だ。子育てには失敗したとしか言えないけどね。だが、彼らは貴族として相応しくない愚か者たちを、切り捨てる判断をした。ふふっ。楽しみだねぇ。頼る家を失い、真実の愛とやらの相手の愛情も失ったら、あの愚か者たちは何に縋ろうとするんだろうね」
黒い笑みを浮かべたクリスティアン殿下に、陛下も苦笑いをしている。
本当に、この方は腹黒い。
おそらく、ご婚約者のご機嫌を損ねた恨みもあるのだろう。
まぁ、私も可愛い娘を傷つけられた恨みがある。彼らには、堕ちるところまで堕ちてもらおう。
71
お気に入りに追加
4,520
あなたにおすすめの小説
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
【完結】自業自得の因果応報
仲村 嘉高
恋愛
愛し愛されて結婚したはずの夫は、モラハラDVな最低男だった。
ある日、殴られて壁に体を叩きつけられ、反動で床に倒れて頭を打ったマリアンヌは、その衝撃で前世を思い出した。
日本人で、ちょっとヤンチャをしていた過去を持った女性だった記憶だ。
男尊女卑の世界に転生したにしても、この夫は酷すぎる。
マリアンヌは、今までの事も含め、復讐する事に決めた。
物理で。
※前世の世代は、夜露死苦な昭和です(笑)
【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。
石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。
ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。
ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。
母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?
112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。
目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。
助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる