決めたのはあなたでしょう?

みおな

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私の何がいけなかったの?《ゾナトフ男爵令嬢視点》

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「ハァハァハァ」

 自分の息をする音が、やけに大きく聞こえる。
 王都から離れた小さな農村の、寂れた無人の小屋で出来るだけ小さく体を丸めた。

 私の名前は、ナターシャ・ゾナトフ。
お父様はゾナトフ男爵で、私は男爵家の娘。

 私はそのことが、ずっと嫌だった。
お母様似の私は、蜂蜜色のふわふわした髪と、エメラルド色の瞳をしていて、周囲の男の子たちはみんな私をチヤホヤしてくれた。

 みんな私を可愛いって、綺麗だって言ってくれて、甘えたらたくさんプレゼントをくれたりした。

 高い物を強請ったりはしないわ。
だって、それの代償に交際しろとか言われたら困るもの。

 私は、もっともっと、私を綺麗にしてくれる人と婚約して結婚するの。

 お金持ちで、しかもかっこよくて優しい人じゃなきゃ、私にはつり合わない。

 お母様はあんなに綺麗なのに、どうして男爵家になんか嫁いだのかしら?

 お母様がお金持ちと結婚していたら、私はもっと素敵なドレスや宝石を自分のものに出来たのに。

 もしかしたら、王子様と婚約出来たかもしれないわ。

 今は通われてないのだけど、かつては王子様も学園に通われてたのよ。

 私が入学した時、二学年上と一学年上に王子様がいたわ。

 私の好みとしては、上の王子様の方ね。
細身で、シュッとしてて、本当にかっこよかったの。

 だから一生懸命アタックしたのに、周囲にいた高位貴族の女たちが、私に嫉妬して邪魔してきたのよね。

 身分がどうとか言ってたけど、二人にそんなの関係ないわよ。

 なのに、いつのまにか王子様は学園からいなくなっちゃうし、学年毎に校舎まで分けられちゃったのよ。

 これじゃあ、一学年上の王子様にも会えないじゃない。

 彼はあんまり好みじゃないけど、噂では他国の王子様もその学年にいるって聞いたのよね。

 相手の王子様には会えなくなっちゃたから、仕方ないわ。

 代わりに他国の王子様でも。
私を一目見たら絶対好きになるはずだもの。

 学園でのことをお父様やお母様には叱られちゃったから、バレないように何とか会おうとしたけど、中庭にも裏庭にも、サロンにも食堂にも現れないのよ。

 どうなってるのよ!
絶対、周囲の女たちが邪魔してるんだわ。
 女の嫉妬って本当に醜いわよね。

 どうしてみんな理解ってくれないのかしら?
 素敵な王子様の隣には、綺麗なお姫様がいるのは当たり前でしょう?

 なのに、王子様とは会えなくて。
同学年の女の子たちは私に冷たくて。

 そんな時に、サイードと出会ったの。

 
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