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どうなってるんだ《サイード視点》

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「だから、アリスを出してくれと言っているだろう!」

 僕はジョージアナ伯爵家の門のところで、家令にした。

 僕は、スペンサー侯爵家の人間だぞ?
伯爵家の、しかも家令風情がいつまで待たせるつもりなんだ。
 しかも、門すら開けようとしない。
ジョージアナ伯爵家は使用人の教育すら出来てないのか?

「本日、スペンサー侯爵家様のご来訪はお聞きしておりません。現在、旦那様はいらっしゃいませんので、お招きするわけにはまいりません。お引き取り下さい」

「だから、伯爵たちではなく、アリスを呼んでくれ!」

「アリスお嬢様とスペンサー侯爵令息様との婚約は、解消されていると伺っております。よって、取り次ぐ必要なしと旦那様より申しつかっております」

 クッ!
本当にジョージアナ伯爵家の人間は、人間味が足りない。

 アリスもそうだったが、可愛げというものがないんだ。

 家令の胸元を掴もうと手を伸ばしたが、門が邪魔をして、一歩下がった家令には手が届かない。

「あまりしつこいようですと、スペンサー侯爵家にご連絡いたしますが?」

「くそっ!明日、また来る!アリスにそう伝えろ!」

 これ以上騒いだら、本当に父上に連絡される。

 そうでなくても、父上も母上も兄上も、愚かな者を見るような目で僕を見るんだ。

 僕はジョージアナ伯爵家を後にすると、ナターシャのゾナトフ男爵家へと足を向けた。

 ナターシャは、一昨日から学園に来ていなかった。
 風邪らしいが、大丈夫だろうか。
途中で、果物を買って男爵家に向かう。

 が。

 ゾナトフ男爵家に着いて、僕は唖然とした。

 門は開きっぱなしで、何なら玄関の扉も開いている。

 恐る恐る近づいてみるが、隙間から覗いても、その小さな屋敷内はシーンとしていた。

「ナターシャ?ゾナトフ男爵?」

「アンタ、そこの屋敷の知り合いか?」

 玄関から声をかけていると、突然後ろから声をかけられてビクリとする。

 振り返ると、柄の悪そうな男が三人立っていた。

「え、あ、いや、ただの・・・クラスメイトで・・・」

「チッ。あの女のイロかと思ったが違うのか。アンタ、知らないか?ここの娘がどっかのお偉い貴族様と付き合ってたらしいんだが」

「い、いや。僕はクラスで頼まれて代表でお見舞いに来ただけだから」

 何故か、僕がナターシャと付き合ってたことを知られたらマズい気がした。

 背中を冷や汗が流れるが、素知らぬふりを続ける。

「お見舞いだぁ?ふーん、まぁいい。アンタ、あの娘の行きそうなとこに心当たりは?」

「え?ナターシャいないの?」

 僕はポカンとした顔で、男たちを見た。
僕が本当に驚いたからか、男たちは僕が彼女の恋人だと疑うこともなく、その場から帰してくれた。

 ナターシャに渡す予定だった果物は男たちの手に渡ったが、僕は足早にそこを立ち去りながら、冷や汗を拭った。

 一体、どうなっているんだ!

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