決めたのはあなたでしょう?

みおな

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噛み合わないふたり

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「お時間を取っていただき、ありがとうございます」

 改めて、頭を下げます。
ソファーに座るように勧めながら、カイン様は扉を閉められました。

 あら?閉めてしまわれますの?
未婚の男女が二人きりだなんて。普通は、少し扉を開けておくものですのに。

「僕がアリス嬢以外を娶ることはない。だから、たとえ周囲に何を噂されたとしても、あなたのことは僕が守ってみせる。それに、ここにはアエラスもいるしね。アリス嬢に不埒な真似などしたら、殴られそうだ」

『開けといても、認識阻害の魔法くらい王様使えるじゃん。アリスのために、ちょっと開けときなよ~』

 アエラスくんがそう言って下さいますけど、マリンティア様と、王太子殿下のことについてお話するのです。

 サザンスィート王国の侍女の方は盗み聞きなんてなさらないでしょうけど、自国の王太子殿下のことですもの。

 できれば、カケラも耳に入れたくはありません。

「アエラスくん、ありがとうございます。でも、大丈夫ですわ。大切なお話なので、誰にも聞かれたくないのです」

『アリスがいいなら、僕はどっちでも良いよ~』

「僕よりアリスの方が好きみたいだな」

『そういうわけじゃないけど、アリスのことは大好き!それに王様だって、どの精霊よりもアリスが一番好きでしょ?』

「ゔ、確かに」

 カイン様、確かにじゃありませんわ。
精霊王様なんですもの。精霊たちが一番好きだとおっしゃってくださいませ。

 でも、私を一番とおっしゃってくださったことは・・・嬉しいですけど。

「ゴホン!それで、アリス嬢。僕に話というのは?」

「あ、そうです!あのっ!カイン様はサザンスィートの王太子殿下と懇意にされていますのよね?」

「は?ジュリアン?」

「ええ。王太子殿下には、どなたか思いを寄せられているお方がいらっしゃるのでしょうか?ご婚約者がいらしたりしますの?」

 私の質問に、カイン様の眉間に皺が寄ります。

 あら?何かご機嫌を悪くすることを言ったかしら?

「その・・・アリス嬢はジュリアンのことを・・・好きなのか?」

「私は王太子殿下のことはよく知りませんから、好きか嫌いかと聞かれましても、よく分かりませんわ。お優しい方だとは思いますけど」

「アリス嬢は優しい男が好きなのか?」

「そうですわね。冷たい方よりは優しい方の方が良いですわ」

 私の好みより、今は王太子殿下のことをお聞きしたいのですけど、カイン様。

「わかった!アリス嬢には絶対に優しくする!」

「ありがとうございます??それよりも王太子殿下のことをお聞かせ下さいますか?」

『ねぇ、ねぇ!アリスはなんでジュリアンのことを知りたいの~?』

 アエラスくんが、私の膝の上にちょこんと座られた途端に、カイン様がつまみ上げられましたわ。

 アエラスくんは軽いですから、かまいませんのに。







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