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マリンティア様の恋

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「マリンティア様?」

 どうして、そんなことをおっしゃるの?
マリンティア様は、婚約解消を告げられた私に心を砕いて下さる、とてもお優しい素敵な女性です。

「どうしてそんなことをおっしゃるのですか?マリンティア様はお優しくて、私の憧れの女性です」

「ありがとう、アリス」

「本当ですよ?私はマリンティア様のことが大好きです!」

 もしかして、誰かに何か言われたのでしょうか?
 でも、王族であるマリンティア様に失礼なことを言う方がいるとは思えません。

「どうされたのですか?何があったのですか?」

「ごめんなさいね、アリス。精霊王様にあんなに思われてるアリスのことが羨ましくなった、それだけなの」

 マリンティア様は、精霊王様のことを?いえ、違いますね。
 先程、精霊王様に私を傷つけたら許さないとおっしゃってくださいましたもの。

 他のどなたか、お好きな方がいらっしゃるの?
 その方との恋に、悩んでらっしゃるの?

「マリンティア様。もし違ったらごめんなさい。どなたか・・・思いを寄せる方がいらっしゃるのですか?」

「・・・」

「私は婚約者が他の人を好きなことにも気付かないくらい恋愛に疎くて、マリンティア様のお力になりますなんて、大見得を切ることはできませんけど、お話を聞くくらいなら出来ますから!」

 情けないことに、力になりますとは言えませんけど、お話を聞いて、悲しい時は一緒に泣くことも、嬉しい時は一緒に喜ぶことくらい出来ます。

「ありがとう、アリス。あの、ね、私・・・私ね、ジュリアンお兄様のことがずっと好きなの」

「!」

 そうなのですね!
お兄様である、ケルヴィン王子殿下のご友人であるジュリアン王太子殿下のことを、マリンティア様はお慕いされているのですね。

 それでは、他国にお見合いに行く気にならないのも分かりますわ。

 代わりに行かれるということは、ケルヴィン王子殿下はご存知なのかしら?

「ケルヴィンお兄様は、私がジュリアンお兄様のことを好きなのを気付いていて・・・お父様に他国を回るようにって言われた時も、それが私のお見合いだって理解ってらして、それで先にサザンスィートに行くように調整して下さったの」

「そうなのですね。それで、ケルヴィン殿下が、残りの国を回って下さるのですね」

 第一王子殿下のクリスティアン殿下も、第二王子殿下のケルヴィン殿下も、とてもマリンティア様のことを可愛がられていらっしゃいますものね。

「でも・・・ジュリアンお兄様には、妹くらいにしか見られてないもの。怖くて、好きだなんて言えないの」

 私はそのあたりのことには鈍いですから・・・うまく言えませんけど、でもなんとかマリンティア様のお力になれないものでしょうか。



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