決めたのはあなたでしょう?

みおな

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精霊国とは

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「僕が婿に行く」

 あまりのことに、部屋の中にいた全員が固まってしまいました。

 いえ。
精霊王様は普通ですけれど。

 精霊国の国王陛下が、他国へ婿に行くなんて、絶対にあり得ません。
 いえ、せめて王家とかならまだ理解できますけど、うちは伯爵家ですよ?

「無理・・・いえ、あまりにも無茶なのでは・・・」

「精霊の国、ベルスィートは正確にいうならば、国として機能しているわけではない」

「?」

 国として機能していない?
よく意味がわかりません。

「アリス嬢は、ベルスィートの名を聞いたことはないだろう?」

「べ、勉強不足で申し訳ありません」

「いや、責めているんじゃない。知らなくて当たり前なんだから。ベルスィートは地図の上には存在しない国だ。だから、他国との交流もない。それはそうだろう?精霊は、人には見えないし声も聞こえない。見えても触れない」

 地図上に存在しない?
でも確かに、私はアエラスくんに触れることが出来ましたけど、王太子殿下は見えるだけだそうですし、マリンティア様は見ることも声を聞くこともできないみたいです。

 精霊王様のお姿を見ることは、全ての人間にできるそうですが。

 そういえば、精霊王様のように、人と同じ姿の方は他にもいらっしゃるのかしら?

「僕しか人の姿をしていないのに、国としては機能しないだろう?それでも国と名を付けているのは、先祖がこのサザンスィート王国に嫁いだからだ。いくらなんでも、王太子に嫁ぐのが、どこの国の誰だかわからないというわけにもいかなかった」

 それは・・・
確かにそうですね。それでも、誰も知らない国名を、当時の国王陛下方は納得されたのですね。

「当時の王太子は、彼女との婚姻を認めないなら、王籍も名も全て捨てて、彼女の元へ行くとまで言ったそうだ。王太子しか子のいなかった王家は、認めざる得なかった。だが、どこの誰かも分からない娘を、王太子妃にするわけにはいかないと困り果てた。そこで当時の精霊女王は、精霊の国をベルスィートと名付けたのだ」

「それでも、他国の人は知らない国名ですよね?」

「ああ。だから、女王は婚約式の際に主要な各国の王族をサザンスィートに集めさせた。精霊女王の力を使って、ベルスィートという遠く離れた王国があると思い込ませたんだ」

 それならば、私が知らなくて当たり前です。ですが精霊王様は、私に精霊の国に来ないかと言われませんでしたか?

 存在しない国なのですよね?

「精霊の国に入れるのは、精霊を見ることができる者だけだ。精霊しか住んでいないから、その入り口すら、普通の人間には分からない。それは、普通の人間からすれば存在していないのと変わらないだろう?」

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