決めたのはあなたでしょう?

みおな

文字の大きさ
上 下
23 / 82

奇跡のようなものだから《カイン視点》

しおりを挟む
『王様、王様~!たいへん!たいへん!』

 風の精霊が、玉座へと慌ただしくやって来た。

 周囲にいた水の精霊や、火の精霊がため息を吐く。

『また、アエラスの大変が始まったわ』

『落ち着きのない』

 アクアとイグニスが呆れの混じった声で、アエラスを迎えた。

「どうした?」

『僕を見て、僕の声を聞いて、僕に触れる人間がいた!』

『「!」』

 驚きで、僕も精霊たちも固まる。

 精霊である彼らの姿を見ることができる人間はいる。サザンスィート王国のジュリアンのように、先祖に精霊の血が混じっている人間だ。

 それでも、全ての子孫が精霊を見れるわけではない。
 ジュリアンがたまたま相性が良かったというだけだ。

 その声を聞くことができる人間も、ごく稀にだがいる。
 だが、その身に触れることの出来る人間はいない。

 それが出来るのは、精霊の王である僕の番になることができる人間だけだ。

 数百年前、サザンスィート王国の王太子がそうだった。

 当時の精霊女王は、番である王太子に嫁ぎ、それ以来、サザンスィート王国には精霊の加護が与えられることとなった。

 精霊の王を継ぐ存在は、一人しか生まれない。

 正確にいうならば、精霊王が亡くなる時に次代の精霊王が生まれるのだ。

 番は人間にしか生まれない。
だから、出会えない精霊王がほとんどだ。

 子を成す必要性がない精霊に何故、番が存在するのか。

 それは、番が精霊にとって半身だからだ。
 満たされぬ渇きを、満たしてくれる存在。

 番を得ずとも、死ぬことはない。
だが、番を得た精霊王は、その力が桁違いに増すという。

『ちょっと、本当なの?アエラス』

『もちろんだよ。大事な大事な王様の番だよ。ちゃんと触れるか確認済み~』

『それで、どこの誰なんだ?』

『えっとね、サザンスィートの王宮にいたよ。でも、初めて見る顔だった。ピンク色の髪の可愛い女の子だったよ』

 アエラスの言葉に、胸が高鳴るのを感じる。

「サザンスィートか。ジュリアンに聞けばわかるだろう」

 王宮にいたのなら、サザンスィート王国の王太子であるジュリアンなら誰かわかるだろう。

 何度か王宮を訪れたことがあるが、番に会ったことはない。

 となると、他国の者か、新しい使用人か。

「アエラス。まさか、幼い子供ではないな?」

『子供かどうかはわかんないけど、王様の肩くらいの背だったよ~』

 なら、幼子ではなさそうだが。
いや。幼子だとしても、精霊の生は長い。番が育つのを待つくらい何でもない。

 番に出会えることは、奇跡のようなものだ。












 






しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ
恋愛
 姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。  婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。  こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。  そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

処理中です...