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妖精さんの・・・王様?

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 結局、カイン様のおっしゃった通りに、二人きりでお話することになりました。

 王太子殿下とマリンティア様は止めて下さったけど、国王陛下が承認されたのです。

 他国の、伯爵令嬢風情が異論を唱えるわけにはいきません。

「甘いものは?好き?」

 カイン様は甲斐甲斐しく、私にお菓子を勧めてくださったりするのですが、少し距離が近くありませんか?

 どうしてお隣に、お座りになられるのでしょうか?

「あ、あの・・・ベルスィート様・・・」

「カインだ」

「・・・」

「カインと呼んで。アリス嬢」

 婚約者でもない殿方のことを、お名前でお呼びすることは出来ません。

 ですが、王族で有られそうなカイン様のお言葉に逆らうこともできません。

 こんな時、マリンティア様がいらっしゃったら、助言して下さるのに。
 どうするのが正しいのかしら。

『王様~、無茶言ったらかわいそうだよ』

「どこが無茶なんだ?」

『だって、困ってるみたいだもん。ねー?』

 私の顔の前で、同意を求めてきたのは・・・

「妖精さん?」

 そう。昨夜、お会いした妖精さんです。
ニコニコしながら、私の膝の上に降りてこられました。

『ちょっと違う~。妖精じゃなくて、精霊だよ~』

「近い!」

 お膝の上でくつろぎ始めた妖精さんを、カイン様がヒョイ!とつまみ上げました。

『王様、ひどぉ~』

 ええと?
お二人はお知り合いなのでしょうか?

 え。ちょっと待ってください。
今、妖精さん・・・いえ、精霊さんはカイン様のことを『王様』とおっしゃっていませんでしたか?

 王様?
王太子殿下や王子殿下でなく・・・国王陛下?

 全身から、血の気が引いていくのがわかります。

『あ。ちょ、ちょっと、王様!たいへん!』

「ん?あ、アリス嬢?顔が真っ青だ。具合が悪いのか?」

「も、申し訳ございません・・・国王陛下とは知らず、ご無礼をお許しください」

 声が震えます。
しっかりしなくては。

 私の失態は、レンブラント王国の失態です。
 私は、マリンティア王女殿下と共に、親善大使としてこの国に訪れているのですから。

「何を謝る?君は何もしていない」

『そうだよ~。悪いのは、王様に違いないよ。だから、そんな不安そうな顔しないで~?昨日みたいに笑ってくれると、僕、嬉しいな~』

 カイン様・・・国王陛下に捕まっていた精霊さんが、その手から逃れて、私の頭の上で髪を撫でてくれます。

 その小さな手で、私を励ましてくれているのが分かった私は、ぎこちなくも微笑んで見せました。

「・・・ッ!かわいい」

『王様、きも~』

 何か小さく呟かれたカイン様が顔を背けられたけど、どうされたのかしら?

 それから、精霊さん。
そんなお言葉使っちゃ駄目ですわ。

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