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私、おかしいんです

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「よく似合っているわ、アリス」

 何故、私は自分で選んだとはいえ若草色のドレスに着替え、侍女の皆様に髪をセットされ、煌びやかな宝飾品を身につけているのでしょう。

 隣に立つマリンティア様は、濃紺のドレスを身につけていらっしゃいます。
 全身が総レースで、首元まで覆われているというのに、すごく大人っぽいです。

「マリンティア様こそ、宵闇の女王様のようです。素敵過ぎです」

「あら、嬉しい。アリスは可愛らしい妖精のようよ。裾の刺繍が蔦だから、花の妖精かしら」

「そんな・・・」

 お世辞と分かってはいますが、私も女性なので褒められれば嬉しいです。
 それも、マリンティア様のようにお美しい方に褒められたのですから。

「さぁ、行きましょう」

 マリンティア様に従って、謁見室のある方向へ向かいます。

 昨日、王族の方とはお目通りさせていただいたのですが、またどなたかとお会いするのかしら?

「レンブラント王国王女殿下、ジョージアナ伯爵令嬢、お見えになりました」

 やはり向かっていたのは謁見室だったようです。
 部屋の前の騎士の方が、マリンティア様の来訪を告げられ、中から国王陛下の「入れ」とのお言葉が聞こえました。

「失礼いたします」

 視線を足下に落とし、屈膝礼を取ります。

「ああ、顔を上げてくれ。二人とも」

 国王陛下のお声で、ゆっくりと顔を上げました。

 そこにいらっしゃったのは、国王陛下に王妃殿下、王太子殿下に・・・

 どなたでしょうか。
襟足で束ねられた真っ白な髪は、腰の辺りまであります。
 その瞳は、夜の闇よりも深く、漆黒です。

 その整った美貌に、スラリとした長躯。私は顔を上げたまま固まってしまいました。

 自分の鼓動が、耳に大きく響きます。
胸が痛いくらいに、ドキドキします。これは、なに?

「顔色が良くない。大丈夫?」

 低い声が心地よくて、めまいがしそうです。
 私、一体どうしてしまったんでしょう?

 ふらりと揺れそうな体に叱咤して、私は再び頭を下げました。

「ご心配をおかけして、申し訳ございません。レンブラント王国ジョージアナ伯爵が娘、アリスと申します」

「ベルスィート王国、カインだ」

 カイン様・・・
家名はないのかしら?とてもじゃないけど、平民には見えません。
 国名とお名前を名乗られたということは、王族の方?

 それに、ベルスィート王国に聞き覚えがありません。本当に、勉強不足ですね。

 でも、この場でお聞きすることは出来ません。
 後で、マリンティア様にお伺いしましょう。

「ジュリアン。彼女と二人だけで話がしたい」

「ええと、ちょっと待て。突然、見知らぬ男と二人きりにされたら、ジョージアナ嬢も困るだろうが」

 二人きり?驚いて、カイン様のお顔を見つめてしまいましたわ。




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