決めたのはあなたでしょう?

みおな

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伝承との出会い

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 その夜の晩餐は、とても豪華だったけれど、国王陛下をはじめとする王族の方とテーブルをともにしたことで、私の頭の中は真っ白でした。

 なんとか粗相はせずに、食事は終えたみたいですけど、緊張のあまり味も覚えていません。

 食事の場ですし、他国の王族の方ですから、婚約解消のことは明言はされませんでしたけど、とてもお優しく私に声をかけて下さいました。

 多分、マリンティア様が私が同行する理由を、お話してくださっていたのだと思います。

 滞在中、お借りしている部屋に戻り、簡易なドレスへと着替えます。

 正式なドレスは一人では着替えることは出来ないので、マリンティア様付きの侍女の方にお手伝いしていただいています。

 申し訳ないのですが、さすがにこれだけは自分ではどうにもなりません。

 一人になった部屋で、椅子へと腰掛けます。

 とても光栄なことですし、お話も楽しいのですが、緊張するのだけはどうしようもありません。

 いずれ爵位を継ぐのですから、全く王族の方と交流がないわけではないのです。
 学園を卒業するまでには、もう少し慣れなくてはいけません。

 ジョージアナ伯爵家を継げるのは、私のみ。
 私が継げなければ、お父様が引退なさる時に、伯爵家の領地は王家にお返しすることになります。

 私は、もっともっと、学ばなければなりません。

 そんなことを考えながら、バルコニーへと続くガラス戸をそっと開きました。

 今宵はとても美しい月夜です。
サザンスイート王国は、自然豊かな国だからでしょう。夜風にも花の香りが含まれていました。

「甘い香り・・・薔薇かしら」

『薔薇が好きなのかな。何色が好きなのかな』

「え?」

 突然聞こえてきた声に、キョロキョロとあたりを見渡します。

 手すりに座った・・・小人?え?まるで物語の中の妖精みたいですわ。

 思わず、何度も瞬きをして、目の前の小さな存在がそこにあるのを確認してしまいました。

 私が、何度も瞬きを繰り返すからでしょうか。

 その妖精?さんは不思議そうに首を傾げました。

『目がかゆいのかな』

「か、ゆくないです。あの・・・」

 なんて呼びかけたら良いのかしら?
そもそも会話をしても大丈夫なのでしょうか?

 私が困ったように言葉を濁すと、妖精さんは目を見開きました。

 小さくて背中に羽はあるけど、仕草は人間と変わらないみたいです。
 どうしましょう。可愛いわ。

『え?きみ、僕が見えるの?』

「え、あの、見えてはいけないのでしょうか?」

 そうですよね。
こんな可愛い存在、目に見えていたら、悪い人に捕まって見せ物や愛玩動物にされてしまうかもしれません。


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