決めたのはあなたでしょう?

みおな

文字の大きさ
上 下
9 / 82

私は相応しくない

しおりを挟む
「アリス。心配したのよ」

 その日、私はマリンティア様に呼ばれて、王宮を訪れていました。

 マリンティア様のお友達候補としてお呼ばれしたお茶会。サイード様とお会いしたあの日、私はマリンティア様のお友達の一人となりました。

 公爵家や侯爵家のご令嬢は、マリンティア様のお兄様である第一王子殿下や第二王子殿下とご一緒の年齢の方々ばかりで、マリンティア様と近しい年齢の中では、我が伯爵家が一番身分があったのです。

 マリンティア様とは仲良くさせていただいていますが、普通のお友達のように頻繁にお会いするわけにもいきません。

 特に学園に入学してからは、お会いしていませんでした。

 マリンティア様は、学園には通われていません。

 第一王子殿下が通われていた頃に、下位貴族のご令嬢が殿下に馴れ馴れしく近づき、婚約者のご令嬢との仲を裂こうとした事件があったそうです。

 それ以来、王族は学園に通わず、王宮内での教育に切り替わったそうです。

「マリンティア様、お久しぶりです」

「アリス、ごめんなさいね?忙しいかと思ったんだけど、変な噂を聞いて心配で仕方なくて」

「ご心配をおかけして申し訳ございません。でも、父が手を尽くしてくれていますから、大丈夫ですわ」

 どうやら、サイード様とのことが、マリンティア様のお耳にまで入ってしまったようです。

「伯爵が?もちろん、婚約は破棄よね?」

「いえ・・・あの、父には解消でとお願いしたのです」

「え?どうして!だって、婚約者の方は不貞とされていたと聞いたわ。それに、その方を愛しているからアリスとの婚約を解消したいって。そんなの許したら駄目よ」

 そうですね。
多分、私の判断は貴族としては正しくないことなのでしょうね。

 婚約者がいながら他の女性と懇意になり、婚約者に婚約解消を願うような人なのに、まだその人に嫌われたくないと思っているなんて。

 私のしたことが公になれば、みんなそんなことをしても許されると思われてしまう。

 私は自分のことばかりで、自分の決断が他の人に与える影響を考えていなかったのですね。

 だけど、サイード様に嫌われたくなかった。
 好きでいてもらえなくても、嫌われたくはなかったのです。

 なんて私は甘いのでしょうか。
貴族として生まれて生きてきながら、その責務を理解していない。

「私は、貴族の令嬢として不適格ですね」

「アリス・・・ごめんなさい。貴女を責めているわけじゃないのよ。悪いのは相手だもの。でも甘い判断をすれば、周囲に軽んじられるし、伯爵家としても良くないと思うのよ」

 だけど、頭で理解しても私に、毅然とした態度が取れるのでしょうか。



しおりを挟む
感想 195

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】誠意を見せることのなかった彼

野村にれ
恋愛
婚約者を愛していた侯爵令嬢。しかし、結婚できないと婚約を白紙にされてしまう。 無気力になってしまった彼女は消えた。 婚約者だった伯爵令息は、新たな愛を見付けたとされるが、それは新たな愛なのか?

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

処理中です...