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私は相応しくない
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「アリス。心配したのよ」
その日、私はマリンティア様に呼ばれて、王宮を訪れていました。
マリンティア様のお友達候補としてお呼ばれしたお茶会。サイード様とお会いしたあの日、私はマリンティア様のお友達の一人となりました。
公爵家や侯爵家のご令嬢は、マリンティア様のお兄様である第一王子殿下や第二王子殿下とご一緒の年齢の方々ばかりで、マリンティア様と近しい年齢の中では、我が伯爵家が一番身分があったのです。
マリンティア様とは仲良くさせていただいていますが、普通のお友達のように頻繁にお会いするわけにもいきません。
特に学園に入学してからは、お会いしていませんでした。
マリンティア様は、学園には通われていません。
第一王子殿下が通われていた頃に、下位貴族のご令嬢が殿下に馴れ馴れしく近づき、婚約者のご令嬢との仲を裂こうとした事件があったそうです。
それ以来、王族は学園に通わず、王宮内での教育に切り替わったそうです。
「マリンティア様、お久しぶりです」
「アリス、ごめんなさいね?忙しいかと思ったんだけど、変な噂を聞いて心配で仕方なくて」
「ご心配をおかけして申し訳ございません。でも、父が手を尽くしてくれていますから、大丈夫ですわ」
どうやら、サイード様とのことが、マリンティア様のお耳にまで入ってしまったようです。
「伯爵が?もちろん、婚約は破棄よね?」
「いえ・・・あの、父には解消でとお願いしたのです」
「え?どうして!だって、婚約者の方は不貞とされていたと聞いたわ。それに、その方を愛しているからアリスとの婚約を解消したいって。そんなの許したら駄目よ」
そうですね。
多分、私の判断は貴族としては正しくないことなのでしょうね。
婚約者がいながら他の女性と懇意になり、婚約者に婚約解消を願うような人なのに、まだその人に嫌われたくないと思っているなんて。
私のしたことが公になれば、みんなそんなことをしても許されると思われてしまう。
私は自分のことばかりで、自分の決断が他の人に与える影響を考えていなかったのですね。
だけど、サイード様に嫌われたくなかった。
好きでいてもらえなくても、嫌われたくはなかったのです。
なんて私は甘いのでしょうか。
貴族として生まれて生きてきながら、その責務を理解していない。
「私は、貴族の令嬢として不適格ですね」
「アリス・・・ごめんなさい。貴女を責めているわけじゃないのよ。悪いのは相手だもの。でも甘い判断をすれば、周囲に軽んじられるし、伯爵家としても良くないと思うのよ」
だけど、頭で理解しても私に、毅然とした態度が取れるのでしょうか。
その日、私はマリンティア様に呼ばれて、王宮を訪れていました。
マリンティア様のお友達候補としてお呼ばれしたお茶会。サイード様とお会いしたあの日、私はマリンティア様のお友達の一人となりました。
公爵家や侯爵家のご令嬢は、マリンティア様のお兄様である第一王子殿下や第二王子殿下とご一緒の年齢の方々ばかりで、マリンティア様と近しい年齢の中では、我が伯爵家が一番身分があったのです。
マリンティア様とは仲良くさせていただいていますが、普通のお友達のように頻繁にお会いするわけにもいきません。
特に学園に入学してからは、お会いしていませんでした。
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「マリンティア様、お久しぶりです」
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「ご心配をおかけして申し訳ございません。でも、父が手を尽くしてくれていますから、大丈夫ですわ」
どうやら、サイード様とのことが、マリンティア様のお耳にまで入ってしまったようです。
「伯爵が?もちろん、婚約は破棄よね?」
「いえ・・・あの、父には解消でとお願いしたのです」
「え?どうして!だって、婚約者の方は不貞とされていたと聞いたわ。それに、その方を愛しているからアリスとの婚約を解消したいって。そんなの許したら駄目よ」
そうですね。
多分、私の判断は貴族としては正しくないことなのでしょうね。
婚約者がいながら他の女性と懇意になり、婚約者に婚約解消を願うような人なのに、まだその人に嫌われたくないと思っているなんて。
私のしたことが公になれば、みんなそんなことをしても許されると思われてしまう。
私は自分のことばかりで、自分の決断が他の人に与える影響を考えていなかったのですね。
だけど、サイード様に嫌われたくなかった。
好きでいてもらえなくても、嫌われたくはなかったのです。
なんて私は甘いのでしょうか。
貴族として生まれて生きてきながら、その責務を理解していない。
「私は、貴族の令嬢として不適格ですね」
「アリス・・・ごめんなさい。貴女を責めているわけじゃないのよ。悪いのは相手だもの。でも甘い判断をすれば、周囲に軽んじられるし、伯爵家としても良くないと思うのよ」
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