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出会った頃は

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 サイード様から婚約を申し込まれたのは、私が13歳の時です。

 その日、王族主催のお茶会が開催されました。

 王女殿下の婚約者候補と、友人候補を決めるためのお茶会で、王女殿下と年齢の近い令息令嬢が集められました。

 私、アリス・ジョージアナはジョージアナ伯爵家の娘です。

 年齢も王女殿下の1歳年下で、身分としても問題ないとして、友人候補の筆頭とされていました。

 レンブラント王国の王女殿下であるマリンティア様は、太陽の光のような暖かいオレンジ色の髪に、青空のような澄んだサファイア色の瞳をされた、とても美しい方です。

 多くのご子息たちはマリンティア様の美しさに心奪われ、マリンティア様の周囲に集まっていました。

 そんな中、離れたテーブルにいた私に話しかけて来たのが、サイード様でした。

 私の淡いピンク色の髪と、薄氷色の瞳を誉めてくれた彼は、翌日スペンサー侯爵様と共に婚約の申し込みに来られたのです。

 それから一年。
私たちはうまくやっていたはずでした。

 サイード様は出会った頃よりも逞しくなられましたが、お優しいところは変わりなく、鍛錬のお休みの時には必ずジョージアナ伯爵家へと足を運んで下さいました。

 そんな幸せであったはずの時間にひびが入ったのは、サイード様が学園に入学されて一年ほどたった頃です。

 最初の頃は、学園が終わり次第顔を見せに来てくれて、学園でのことを話して下さっていました。

 私はサイード様より2歳年下なので、一緒に学園に通えるのが待ち遠しいと、そう言って下さっていたのに。

 段々と伯爵家を訪れる回数は減っていき、最近では忙しいからとほとんどお会いすることさえなくなっていました。

 私とサイード様の婚約は、政略的なものです。

 スペンサー侯爵家は、数年前の旱魃により、領地の経営が厳しくなっていました。

 我がジョージアナ伯爵家は身分こそ伯爵家ですが、領民の努力もあって財力がありました。

 そこで、スペンサー侯爵家から婚約の申し出があったのです。

 未来の伯爵家の当主の伴侶の実家を救うということで、我が家からスペンサー侯爵家へと融資されることになったのです。

 私も、出会った頃のサイード様に好意を抱いていましたし、サイード様も政略的なものでお父様が決められたとはいえ、私に一目惚れしたのだとおっしゃってくださっていたのに。

 いえ。
きっと出会った頃は、私のことを好きでいてくださったのでしょう。

 真に愛する方と出会ってしまわれた。
そういうことなのだと思います。
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