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驚くことにやって来ます

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「は?」

 ノワールさんの報告に、ヴィンセント様が珍しく驚いた声を出されました。

 わかります。私も同じ気持ちです。

「聖女・・・ルディアの受け渡しを求めている、と聞こえたが?」

「はい。あちらからの書面にはそうありますね。王太子自らがそうですよ」

「・・・」

「・・・」

 私は、自分が世間知らずだと分かっています。

 前回の生では、ほとんどを塔の中で過ごした上に、教育すら受けていません。

 ですから幼い子供程度、もしかしたら平民の子供の方が世間というものを知っているかもしれません。

 ですが、そんな私でもその申し出がということくらい分かります。

 今の私は、メルキオール王国国王であるヴィンセント様の婚約者です。

 しかも、ネモフィラ王国で生まれてメルキオール王国に渡ったのではなく、メルキオール王国に生まれているのです。

 メルキオール王国は魔族の国ですが、平民の中に普通の人間がいないわけではありません。

 ごくごく少数ですが、他国からの移民として人間もいるそうなのです。

 多分、女神様が国には生まれ変わらせたくないと考えてくださったのだと思います。

 を受け渡せとは、なかなか不思議な考え方です。

 ノワールさんやイブリン、アレッタの様子を見ても、それがおかしいことだと理解ります。

 王太子ということは、あの私を殺した元婚約者でしょうか。

 ヴィンセント様は私の手を取ると、そのまま私を抱き寄せました。

「心配ない。絶対にルディアを渡したりしない。ルディアは、メルキオール王国の国民であり、俺の婚約者だ」

「・・・はい。心配してないです。だって私は、ヴィンセント様を信じていますから」

「ああ。俺はルディアを裏切ったりしない」

「私たちも必ずルディア様をお守りいたします」

 イブリンとアレッタも声を揃えて、そう言ってくれました。

「はい。お願いします」

「何度も来られても面倒だ。今回で叩き潰す。ノワール、そのつもりでいろ」

「かしこまりました」

 確かに何度来られても、私がネモフィラ王国に行くことはありませんし、はっきりとお断りするべきですね。

 別に回復薬をお売りすることはかまいませんが、それはヴィンセント様やノワールさんが考えてくださるでしょう。

 私が守りたいのは、ヴィンセント様やみんなであり、メルキオール王国の国民なのです。

 私はもう、あの頃の私ではないのですから。
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