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聖女として相応しくなくても
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「ルディアは、あの国の民を助けたいか?」
ヴィンセント様の問いに、首を傾げます。
ネモフィラ王国の民を助けたいか・・・ですか。
「関わり合いたくないというのが本心です。会ったこともない人たちに、別に恨みはありませんが、国の中枢にいる人たちには嫌悪感しかないのです。誰かを助けようとすることで、その人たちと関わる可能性があるのなら、私は人でなしと言われたとしても、助けたいとは思いません」
聖女として失格かもしれません。
それでも、ずっと都合よく私をこき使って、挙げ句に殺したあの国を守りたいとは思えないのです。
私が守りたいのは、ヴィンセント様であり、ノワールさんであり、イブリンやアレッタであり、このメルキオール王国の人たちです。
女神様は、今度こそ幸せにと言ってくださいました。
なら、私は私を幸せにしてくれるこの国を守る聖女でいたいのです。
「そうか。あの国がどうなってもルディアはかまわないんだな?」
「滅べばいいとまでは言いませんが、私から関わりたいとは思えません」
助けを求められて、ヴィンセント様がお受けするならば、仮に一時的な結界を張ることはかまいません。
回復薬も作りましょう。
でも、結界は定期的に張らなければならないので、毎回毎回それを張りに行くことはできません。
いえ。
ヴィンセント様が張れとおっしゃるなら、張ります。
ヴィンセント様やノワールさん、イブリンやアレッタは、私に私が望まむことをしろと言いません。
だから彼らがしろと言うなら、それは私がするべきことなのです。
「ルディア。俺たちはルディアが間違ったことをすれば、ちゃんと駄目だと伝える。だから、自分の思ったようにしていいんだ。ルディアは、ルディアというひとりの人間なのだから、人形のように言いなりになる必要はないんだ」
「間違えるかもしれません」
「俺だって、ノワールだって、イブリンやアレッタだって間違える。間違えても悩んでもいいんだ」
間違えても良い?
ネモフィラ王国ではずっと、あれは駄目これも駄目ばかりでした。
何かを望めば叱咤されて、その日の食事は水だけになりました。
それなのに・・・
私は戸惑った表情をしていたのでしょう。
ヴィンセント様が私の頭を、ゆっくりと撫でてくれました。
「ゆっくりでいい。俺もみんなも、ずっとルディアのことが大好きだし、そばにいる。だから心配しないでいい」
「ずっとそばにいてくれるんですか?」
「ああ。ルディアが嫌だと言うまで、離れない。だから、大丈夫だ」
ヴィンセント様は嘘をつきません。
私は初めて自分から、ヴィンセント様に抱きつきました。
拒絶されないでしょうか?
見上げたヴィンセント様は、驚いた表情をされていましたが、とても優しく微笑んでくれました。
ヴィンセント様の問いに、首を傾げます。
ネモフィラ王国の民を助けたいか・・・ですか。
「関わり合いたくないというのが本心です。会ったこともない人たちに、別に恨みはありませんが、国の中枢にいる人たちには嫌悪感しかないのです。誰かを助けようとすることで、その人たちと関わる可能性があるのなら、私は人でなしと言われたとしても、助けたいとは思いません」
聖女として失格かもしれません。
それでも、ずっと都合よく私をこき使って、挙げ句に殺したあの国を守りたいとは思えないのです。
私が守りたいのは、ヴィンセント様であり、ノワールさんであり、イブリンやアレッタであり、このメルキオール王国の人たちです。
女神様は、今度こそ幸せにと言ってくださいました。
なら、私は私を幸せにしてくれるこの国を守る聖女でいたいのです。
「そうか。あの国がどうなってもルディアはかまわないんだな?」
「滅べばいいとまでは言いませんが、私から関わりたいとは思えません」
助けを求められて、ヴィンセント様がお受けするならば、仮に一時的な結界を張ることはかまいません。
回復薬も作りましょう。
でも、結界は定期的に張らなければならないので、毎回毎回それを張りに行くことはできません。
いえ。
ヴィンセント様が張れとおっしゃるなら、張ります。
ヴィンセント様やノワールさん、イブリンやアレッタは、私に私が望まむことをしろと言いません。
だから彼らがしろと言うなら、それは私がするべきことなのです。
「ルディア。俺たちはルディアが間違ったことをすれば、ちゃんと駄目だと伝える。だから、自分の思ったようにしていいんだ。ルディアは、ルディアというひとりの人間なのだから、人形のように言いなりになる必要はないんだ」
「間違えるかもしれません」
「俺だって、ノワールだって、イブリンやアレッタだって間違える。間違えても悩んでもいいんだ」
間違えても良い?
ネモフィラ王国ではずっと、あれは駄目これも駄目ばかりでした。
何かを望めば叱咤されて、その日の食事は水だけになりました。
それなのに・・・
私は戸惑った表情をしていたのでしょう。
ヴィンセント様が私の頭を、ゆっくりと撫でてくれました。
「ゆっくりでいい。俺もみんなも、ずっとルディアのことが大好きだし、そばにいる。だから心配しないでいい」
「ずっとそばにいてくれるんですか?」
「ああ。ルディアが嫌だと言うまで、離れない。だから、大丈夫だ」
ヴィンセント様は嘘をつきません。
私は初めて自分から、ヴィンセント様に抱きつきました。
拒絶されないでしょうか?
見上げたヴィンセント様は、驚いた表情をされていましたが、とても優しく微笑んでくれました。
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