21 / 30
願い〜女神様視点〜
しおりを挟む
わたくしの名前はエウリュノメー。
この世界を生み出した、創造の女神と呼ばれるものです。
正確に言うと少々違うのですが、難しい話になりますので、世界というゲーム盤を眺めている傍観者とでも思ってくださればいいと思います。
わたくしは、多くの生き物をこの世界に生み出しました。
植物も、動物も、魔物も、妖精も、人間も、魔族も。
全てに等しく命を与えて生み出した以降は、わたくしがそれらに何かをすることはありません。
わたくしはあくまで傍観者であり、生み出した者たちが争おうと淘汰されようと、手を出すことはありません。
そんなわたくしですが、ただ一度だけ一人の少女の生に手を差し伸べてしまいました。
彼女は、わたくしが選んだ聖女という存在です。
等しく力を与えましたが、永き時の中で格差ができて来ました。
人間よりも魔族や魔物の方が力が強く、容易く人間が滅んでしまうことから、人間を守る守護者としての役目を聖女に与えたのです。
聖女の力の源は、わたくしの力です。
ですから、それを行使するに相応しい精神の持ち主を厳選します。
今期選んだのは、平民の少女ルディアです。
両親を病で失い、それでも前を向いて生きていた少女。
食べることすら苦しい生活から、聖女になれば人に敬われる存在になる。
だからこそルディアを選んだのです。
彼女のこの先の生が、実りあるものであるようにと。
ですが、愚かな人間というものはいつの時代にもいるものです。
こともあろうに聖女を便利な道具扱いをし、生命の危機にあった生活から脱出させるための聖女認定だったというのに、聖女になる前よりも酷い生活を送らせたのです。
そして、あろうことか聖女を悪女と罵り、わたくしの選んだ聖女の首を刎ねたのです。
許されることではありませんが、わたくしはルディアの時を巻き戻すことにしました。
罰を受けることになるでしょう。
それでも、どんな扱いをされてもただひたすらわたくしに祈ってくれていたあの子に、笑顔で過ごして欲しいと思ったのです。
聖女を殺した国になど、生まれ変わらせたりしません。
ルディアを守れる強者、魔王の国に転生させることにしました。
聖女の力は、ルディアにこそ相応しいものです。
ルディアが守りたいと思うものを、守れるための力を与えておきたい。
元々は弱き人間を守るための聖女という存在ですが、それを自ら手放したのが人間です。
ならば、淘汰されても文句は言えないはずです。
わたくしは、罰を受けてしばらくは眠りにつかなければなりません。
どうかどうか、目覚めた時にルディアが幸せな生を送っていますように。
聖女になったことを心から喜んでいますように。
この世界を生み出した、創造の女神と呼ばれるものです。
正確に言うと少々違うのですが、難しい話になりますので、世界というゲーム盤を眺めている傍観者とでも思ってくださればいいと思います。
わたくしは、多くの生き物をこの世界に生み出しました。
植物も、動物も、魔物も、妖精も、人間も、魔族も。
全てに等しく命を与えて生み出した以降は、わたくしがそれらに何かをすることはありません。
わたくしはあくまで傍観者であり、生み出した者たちが争おうと淘汰されようと、手を出すことはありません。
そんなわたくしですが、ただ一度だけ一人の少女の生に手を差し伸べてしまいました。
彼女は、わたくしが選んだ聖女という存在です。
等しく力を与えましたが、永き時の中で格差ができて来ました。
人間よりも魔族や魔物の方が力が強く、容易く人間が滅んでしまうことから、人間を守る守護者としての役目を聖女に与えたのです。
聖女の力の源は、わたくしの力です。
ですから、それを行使するに相応しい精神の持ち主を厳選します。
今期選んだのは、平民の少女ルディアです。
両親を病で失い、それでも前を向いて生きていた少女。
食べることすら苦しい生活から、聖女になれば人に敬われる存在になる。
だからこそルディアを選んだのです。
彼女のこの先の生が、実りあるものであるようにと。
ですが、愚かな人間というものはいつの時代にもいるものです。
こともあろうに聖女を便利な道具扱いをし、生命の危機にあった生活から脱出させるための聖女認定だったというのに、聖女になる前よりも酷い生活を送らせたのです。
そして、あろうことか聖女を悪女と罵り、わたくしの選んだ聖女の首を刎ねたのです。
許されることではありませんが、わたくしはルディアの時を巻き戻すことにしました。
罰を受けることになるでしょう。
それでも、どんな扱いをされてもただひたすらわたくしに祈ってくれていたあの子に、笑顔で過ごして欲しいと思ったのです。
聖女を殺した国になど、生まれ変わらせたりしません。
ルディアを守れる強者、魔王の国に転生させることにしました。
聖女の力は、ルディアにこそ相応しいものです。
ルディアが守りたいと思うものを、守れるための力を与えておきたい。
元々は弱き人間を守るための聖女という存在ですが、それを自ら手放したのが人間です。
ならば、淘汰されても文句は言えないはずです。
わたくしは、罰を受けてしばらくは眠りにつかなければなりません。
どうかどうか、目覚めた時にルディアが幸せな生を送っていますように。
聖女になったことを心から喜んでいますように。
464
お気に入りに追加
691
あなたにおすすめの小説

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています


婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

聖女の婚約者と妹は、聖女の死を望んでいる。
ふまさ
恋愛
聖女エリノアには、魔物討伐部隊隊長の、アントンという婚約者がいる。そして、たった一人の家族である妹のリビーは、聖女候補として、同じ教会に住んでいた。
エリノアにとって二人は、かけがえのない大切な存在だった。二人も、同じように想ってくれていると信じていた。
──でも。
「……お姉ちゃんなんか、魔物に殺されてしまえばいいのに!!」
「そうだね。エリノアさえいなければ、聖女には、きみがなっていたのにね」
深夜に密会していた二人の会話を聞いてしまったエリノアは、愕然とした。泣いて。泣いて。それでも他に居場所のないエリノアは、口を閉ざすことを選んだ。
けれど。
ある事件がきっかけで、エリノアの心が、限界を迎えることになる。

聖水を作り続ける聖女 〜 婚約破棄しておきながら、今さら欲しいと言われても困ります!〜
手嶋ゆき
恋愛
「ユリエ!! お前との婚約は破棄だ! 今すぐこの国から出て行け!」
バッド王太子殿下に突然婚約破棄されたユリエ。
さらにユリエの妹が、追い打ちをかける。
窮地に立たされるユリエだったが、彼女を救おうと抱きかかえる者がいた——。
※一万文字以内の短編です。
※小説家になろう様など他サイトにも投稿しています。

契約破棄された聖女は帰りますけど
基本二度寝
恋愛
「聖女エルディーナ!あなたとの婚約を破棄する」
「…かしこまりました」
王太子から婚約破棄を宣言され、聖女は自身の従者と目を合わせ、頷く。
では、と身を翻す聖女を訝しげに王太子は見つめた。
「…何故理由を聞かない」
※短編(勢い)
修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね
星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』
悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。
地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……?
* この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。
* 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる