冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな

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居心地の良い場所

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 私にとって、メルキオール王国は居心地の良い場所です。

 誰も、私が何も出来なくても責めたりしません。

 ヴィンセント様はもちろんですが、イブリンもアレッタさんもノワールさんも、みんな私に優しくしてくれます。

 だからみんなのために、何かしたいのです。

「ルディアは優しいな」

「いえ、違います。優しいのは、ヴィンセント様であり、ノワールさんであり、イブリンであり、アレッタさんです。それからお城の皆さんも」

 私が優しく見えるのならば、それは皆さんに優しくされたからです。

「私に何かできることはあるでしょうか?」

「そうだな・・・ルディアは聖女として結界の維持以外にどんなことをしていたんだ?」

「そうですね。基本は結界の維持でしたけど、毎日回復薬の生産もしていました」

 ネモフィラ王国は聖女の結界で魔物が侵入してくることはなかったですけど、他国に売るからと回復薬を作らされていました。

 聖女としての当然の役目だと言われて。

 あの頃はそれを疑問に思うこともなかったですが、今考えると『他国に売る物』を何故聖女が作らなければならないのでしょう。

 いえ。作るのが嫌だとかではなく、それに対する対価ももらえないのに、私は疑問にも思わず、動かぬ体を酷使して作っていました。

「その回復薬とは、どうやって作るんだ?」

「精製水に聖力を注ぐのです。注ぐ量により、効果が変わります」

「そうなのか。魔族にも効くのだろうか」

「わかりません。私が初めて会った魔族がヴィンセント様ですから」

 効くのならお役にたてるのですが、どうやって調べればいいのでしょうか。

 聖女の作った回復薬ですし、ヴィンセント様たち魔族の方にも効くのでしょうか?

 薬が毒になったりしないでしょうか。

「魔獣に襲われて、もう助かる見込みがない幼子がいる。親にも確認しなければならないが、わずかでも可能性があるなら試してみたい。作ってもらえないか」

「もちろんです。すぐに帰りましょう」

「良いのか?」

「街にはまた来れます。でも、回復薬は一分一秒でも早く作りたいです」

 人の命より重いものはありません。
かつて死んだ私が言うのだから間違いありません。

 幼い子供の、命の灯火が消えようとしているなんて。

 どれほどの傷かわかりませんが、痛いし苦しいでしょう。

 それに、そんな苦しんでいる子供を見ているご両親も辛いと思います。

 私の聖女としての力が役に立つなら、私はそのために生き返ったのだと思えます。

 優しいこの人たちに報いたい。

 心からそう思うのです。

 
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