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お土産にしたいのです

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 ヴィンセント様が私の口の中に放り込んだチョコレートは、とても甘くて、スゥーっと溶けていきました。

「美味しいです」 

 私が頬を押さえてそう言うと、ヴィンセント様はまた一粒、私に差し出してくれます。

 口を開けて、今度はすぐに溶けてなくならないようにモグモグせずにジッと舌の上に置いていたのですが、すぐに柔らかくなって溶けてしまいました。

「ほら、次をやるから」

 指でつまんだチョコレートで、私の唇を突つきます。

 お皿の上のチョコレートが残り少なくなっているのを見て、私は口を開くのを躊躇いました。

 アレッタさんに、お土産に持って帰りたいです。

 口を開こうとしない私に、ヴィンセント様はどうした?と尋ねられました。

「お土産に持って帰りたいです」

「・・・そうか。なら、土産分は別に買うからこれは食べると良い」

「良いのですか?」

「ああ。イブリン、城のみんなの分を買って、届けるように伝えろ」

「かしこまりました」

 イブリンがお店の奥に向かって行きました。

 私はお金を持っていないので、今回はヴィンセント様にお願いするしかありません。

 ちゃんとお金を稼げるようになったら、ヴィンセント様にも何かお返ししたいです。

 だってヴィンセント様はいつもいつも、私にたくさんの物を与えてくれるのです。

 美味しいお菓子も、綺麗なドレスも、優しい言葉も、たくさんたくさんくれます。

「ヴィンセント様、ありがとうございます」

「ああ。ルディアが喜んでくれるなら、何でも買ってやる。だから、言葉にして言ってくれ」

「でも、我儘にならないですか?」

「こんなのは我儘でもなんでもない。駄目なことはちゃんと駄目だと教えるから、俺やノワール、イブリンには思ったことをちゃんと言ってくれ」

 ヴィンセント様の言葉に、こくりと頷きました。

 塔では、水をくださいとかお願いしても、我儘を言うと叱られていましたから、いけないことだと思っていました。

「ルディアは、まだ精神が子供のままなんだ。色んなことを少しずつ教えるから、ゆっくり大人になっていけばいい。俺もノワールもイブリンもアレッタも、誰もルディアを叱ったりしないから」

「はい」

 メルキオール王国のお城のみんなは、とても優しいです。

 ネモフィラ王国の人たちみたいに、私を罵ったりしません。

 嘘もつきません。

 だから、ヴィンセント様の言葉は信じられます。

 女神様。
私、幸せです。だから、私に優しいこの人たちに、何か恩返しがしたいです。

 聖女の力以外に何ができるかわからないですけど、私がんばります。

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