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聖女であることをお話します

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 私が聖女であることを、ヴィンセント様にお話するべきでしょうか?

 迷いましたが、ここまでお世話になり、しかも記憶のない婚約者を受けいれてくださっているのです。

 内緒事をするべきではないと判断しました。

「ヴィンセント様、お話があります」

「改まって、どうした?」

「私は、自分の名前以外は何も覚えていないと以前ヴィンセント様に言いました。ですが、ひとつお話していないことがあります」

 私の改まった様子に、ヴィンセント様は私と向き合って下さいました。

 出て行けと言われるかもしれません。

 もしかしたら、殺されてしまうかもしれません。

 でも、こんなに良くしていただいているのに、嘘をついたまま騙していたくないのです。

 それに私は、すでに死んだ身。

 生き返らせてくださった女神時には申し訳ありませんが、私は自分自身に胸をはれる自分でいたいのです。

「私には記憶があります。ヴィンセント様たちのことを忘れてしまったのは、多分この記憶のせいだと思うのです。そして、前回の私と同じく・・・聖女の力が宿っています」

「どういうことだ?」

「前回の私もルディアと言いました。ネモフィラ王国の平民でしたが聖女の力が宿ったことで王都に連れて行かれました。それからずっと、祈りの間に閉じ込められ、ずっと祈りを捧げる日々でした」

 あの頃のことを思い出すと、今でも胸が痛くなります。

 聖女の力を下さった女神様が悪いとは言いませんが、ただの平民だったならあんなに早世することもなかったと思うのです。

「王太子殿下の婚約者とされたのは、おそらく私が他国に連れ去られたり逃げることを避けるためだと思います。そんな可能性はなかったのに。何故なら私は、塔から出されることがなかったからです。唯一出たのは、王太子殿下から悪女だと冤罪をかけられて処刑される時でした」

「処刑、だと?」

「はい。私は祈りの間で碌な食事も与えられずに、貧民街の平民並みの生活でしたから、王太子殿下から酷く嫌われていました。いえ、逆ですね。嫌っていたから、私は聖女だというのに敬われることすらありませんでした」

「あの国の王太子が・・・」

 ヴィンセント様のお声に怒りを感じますが、話し切ってしまいましょう。

「処刑された私が目覚めたのが、このお城でした。女神様が、私を憐れんで時を戻して下さったそうです。今、女神様のお声を聞くことはできませんが、聖女としての力は感じます。ずっと隠していて申し訳ありませんでした」

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