8 / 30
聖女であることをお話します
しおりを挟む
私が聖女であることを、ヴィンセント様にお話するべきでしょうか?
迷いましたが、ここまでお世話になり、しかも記憶のない婚約者を受けいれてくださっているのです。
内緒事をするべきではないと判断しました。
「ヴィンセント様、お話があります」
「改まって、どうした?」
「私は、自分の名前以外は何も覚えていないと以前ヴィンセント様に言いました。ですが、ひとつお話していないことがあります」
私の改まった様子に、ヴィンセント様は私と向き合って下さいました。
出て行けと言われるかもしれません。
もしかしたら、殺されてしまうかもしれません。
でも、こんなに良くしていただいているのに、嘘をついたまま騙していたくないのです。
それに私は、すでに死んだ身。
生き返らせてくださった女神時には申し訳ありませんが、私は自分自身に胸をはれる自分でいたいのです。
「私には前回生きていた記憶があります。ヴィンセント様たちのことを忘れてしまったのは、多分この記憶のせいだと思うのです。そして、前回の私と同じく・・・聖女の力が宿っています」
「どういうことだ?」
「前回の私もルディアと言いました。ネモフィラ王国の平民でしたが聖女の力が宿ったことで王都に連れて行かれました。それからずっと、祈りの間に閉じ込められ、ずっと祈りを捧げる日々でした」
あの頃のことを思い出すと、今でも胸が痛くなります。
聖女の力を下さった女神様が悪いとは言いませんが、ただの平民だったならあんなに早世することもなかったと思うのです。
「王太子殿下の婚約者とされたのは、おそらく私が他国に連れ去られたり逃げることを避けるためだと思います。そんな可能性はなかったのに。何故なら私は、塔から出されることがなかったからです。唯一出たのは、王太子殿下から悪女だと冤罪をかけられて処刑される時でした」
「処刑、だと?」
「はい。私は祈りの間で碌な食事も与えられずに、貧民街の平民並みの生活でしたから、王太子殿下から酷く嫌われていました。いえ、逆ですね。嫌っていたから、私は聖女だというのに敬われることすらありませんでした」
「あの国の王太子が・・・」
ヴィンセント様のお声に怒りを感じますが、話し切ってしまいましょう。
「処刑された私が目覚めたのが、このお城でした。女神様が、私を憐れんで時を戻して下さったそうです。今、女神様のお声を聞くことはできませんが、聖女としての力は感じます。ずっと隠していて申し訳ありませんでした」
迷いましたが、ここまでお世話になり、しかも記憶のない婚約者を受けいれてくださっているのです。
内緒事をするべきではないと判断しました。
「ヴィンセント様、お話があります」
「改まって、どうした?」
「私は、自分の名前以外は何も覚えていないと以前ヴィンセント様に言いました。ですが、ひとつお話していないことがあります」
私の改まった様子に、ヴィンセント様は私と向き合って下さいました。
出て行けと言われるかもしれません。
もしかしたら、殺されてしまうかもしれません。
でも、こんなに良くしていただいているのに、嘘をついたまま騙していたくないのです。
それに私は、すでに死んだ身。
生き返らせてくださった女神時には申し訳ありませんが、私は自分自身に胸をはれる自分でいたいのです。
「私には前回生きていた記憶があります。ヴィンセント様たちのことを忘れてしまったのは、多分この記憶のせいだと思うのです。そして、前回の私と同じく・・・聖女の力が宿っています」
「どういうことだ?」
「前回の私もルディアと言いました。ネモフィラ王国の平民でしたが聖女の力が宿ったことで王都に連れて行かれました。それからずっと、祈りの間に閉じ込められ、ずっと祈りを捧げる日々でした」
あの頃のことを思い出すと、今でも胸が痛くなります。
聖女の力を下さった女神様が悪いとは言いませんが、ただの平民だったならあんなに早世することもなかったと思うのです。
「王太子殿下の婚約者とされたのは、おそらく私が他国に連れ去られたり逃げることを避けるためだと思います。そんな可能性はなかったのに。何故なら私は、塔から出されることがなかったからです。唯一出たのは、王太子殿下から悪女だと冤罪をかけられて処刑される時でした」
「処刑、だと?」
「はい。私は祈りの間で碌な食事も与えられずに、貧民街の平民並みの生活でしたから、王太子殿下から酷く嫌われていました。いえ、逆ですね。嫌っていたから、私は聖女だというのに敬われることすらありませんでした」
「あの国の王太子が・・・」
ヴィンセント様のお声に怒りを感じますが、話し切ってしまいましょう。
「処刑された私が目覚めたのが、このお城でした。女神様が、私を憐れんで時を戻して下さったそうです。今、女神様のお声を聞くことはできませんが、聖女としての力は感じます。ずっと隠していて申し訳ありませんでした」
526
お気に入りに追加
658
あなたにおすすめの小説
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない
曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが──
「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」
戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。
そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……?
──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。
★小説家になろうさまでも公開中
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる