冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな

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冤罪で断罪されました

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「聖女ルディア!いや、悪女ルディアの聖女という地位に胡座をかき聖女としての務めを果たさぬ所業、許しがたい!王太子レイモンドの名の下に、悪女ルディアとの婚約を破棄し悪女ルディアの処刑を宣言する!」

 王宮のホールで、私の婚約者である・・・いえ、破棄されたので婚約者だったですね、王太子殿下であるレイモンド様が声高らかに宣言されたそうです。

 というのも、私はそのホールにはいませんでしたので、王太子殿下ご本人からそう言ったとお聞きしただけですが。

 どういうことでしょうか。
私は聖女としての務めを果たさなかったことなどないのですが。

 このネモフィラ王国において、聖女とはとても大切な存在です。

 聖女の待つ聖なる力で結界が張られることで、魔物が入って来ず、また災害などが起きないのです。

 そして聖女は、日々この国の中央に位置する塔の最上階にある祈りの間で祈りを捧げなくてはなりません。

 聖女が祈りを捧げないと、この国を覆う結界は一週間ほどで消え失せるのです。

「お待ちください。私は・・・」

「黙れ、悪女!平民風情が尊い立場の俺に話しかけるなど不敬だ!」

 私は確かに平民です。

 聖女の力が発現したことで、王太子殿下との婚約が成りました。

 それは聖女としての力を、王家が手放したくないからです。

 ああ。
だから、王太子殿下は国王陛下がいらっしゃらない今を狙って婚約破棄を宣言されたのですね。

 私が死ねば、新たな聖女が現れます。

 誰に聖女の力が宿るのかは、神様だけが知ることですが、王家の力をもってすれば見つけられるのかもしれませんね。

 ならば、平民の・・・
好きになれない私よりも、新たな聖女を求める方が王太子殿下は良いのかもしれません。

 王太子殿下と近しい年齢とは限りませんし、貴族の方になるとは限りませんけど。

 私は、黙って立ち上がりました。

 私を捕えるために祈りの間に入って来た王太子殿下と騎士の方々ですが、私のあまりの見窄らしさに戸惑っているようです。

 私は何の飾り気もない白のワンピースを着ていますが、何度も洗濯しているソレは生地も傷んで真っ白とは言えません。

 だというのに、半袖のその袖から出ている腕はガリガリで、腰まである髪にも艶などありません。

 私は、結界を張るためのであり、国を繁栄に導くためだけに存在しているのです。

 そのを王太子殿下の婚約者としたのは、他国に逃げられないためでしかありません。

 だから、当の王太子殿下が望むのならば、婚約破棄など喜んでお受けします。

 出来れば処刑はしないでいただきたいですが、聖女を迎えるためには、聖女が死ななければなりません。

 私は躊躇う騎士に連れられ、塔の地下へと連れて行かれました。

 祈りを捧げる塔の地下に、処刑場があるとは皮肉なものです。

 この日、ネモフィラ王国から聖女が消えました。
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